フラット35とは、独立行政法人である住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している「全期間固定金利型」の住宅ローンです。
「ローン審査に自信がないんだけどフラット35だったら大丈夫なのかな?」 「フラット35は契約社員とか派遣社員でも借りられるの?」
フラット35については、民間の金融機関が提供している住宅ローンよりも借りやすいイメージがありますが、実際はどうなのか気になりますよね。
そこで、この記事では、フラット35の特徴、メリット・デメリットから、一番気になる利用の条件までくわしく紹介します。最後には、フラット35を選ぶほうがいいのか、止めたほうがいいのか、ご自身で判定できるように「フラット35に向く人・向かない人」を解説します。
この記事を読むことで、自分に適した住宅ローンを決めることができるようになり、安心して家づくりを進めることができるでしょう。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
1.フラット35の特徴と民間金融機関の住宅ローンとの比較
フラット35の特徴のご紹介と民間金融機関の住宅ローンとの違いを比較をします。
1-1.フラット35の特徴
まず最初に、フラット35の特徴をご紹介します。フラット35は全期間固定金利型なので、金利は完済するまで一定で、ローン契約を結んだ時点で返済額が固定します。これ以外にフラット35の特徴はどんなものがあるのでしょうか。表にしてまとめましたのでご覧ください。
◎フラット35の特徴
- 全期間固定金利型
- 返済期間は15年以上35年以内
- 借入可能額は100万円以上8,000万円以下
- 保証人不要
- 保証料、繰上返済手数料は一切必要なし
- 申込時の年齢は70歳未満
- 団体信用生命保険への加入は任意(入らなくてもOK)
- 申込条件に職業の制限なし(派遣・契約社員、パート・アルバイト・自営でも申し込める)
- 転職してすぐであっても申し込める(収入の確認あり)
- 育児休業中、産休中、介護休暇中でも申し込める(収入の確認あり)
- 夫婦の年収を合算するなどしても申し込める(一定の条件あり)
- 一定の条件を満たしていれば外国人でも借りることができる
- 物件に利用条件があり、物件が審査基準となる
- 質の高い住宅(省エネルギー性・耐震性等)を取得した場合、金利を一定期間引き下げる制度あり
*借入金利の設定については提携金融機関ごとに異なるため注意が必要 以下のページで各金融機関の最新の借入金利を調べることができます
民間の金融機関の住宅ローンの場合は、審査基準が厳しく、転職してすぐの場合や自営業の方は借りにくいのですが、フラット35の場合は、上記の表のようにかなり要件が緩やかになっているので、他の住宅ローンの申し込みはできない人であっても申し込むことが可能となっています。
また、提携している金融機関ごとに借入金利の設定を行なっているので、金利の確認をしてから申し込みをする必要もあります。
フラット35は全期間固定金利型ですが、住宅ローンの金利には3つのタイプがありますので、ここで簡単に説明しておきましょう。
◎住宅ローンの金利タイプ
①全期間固定金利型 *フラット35はこのタイプ
借入時から完済するまで、金利が変わらないタイプ
- 変動金利タイプよりも高めの金利に設定されている
- ローンを組んだ時点でローンの総額(返済額)がわかる
②変動金利型
返済期間中であっても、金融情勢の変化によって金利が変動するタイプ
- 固定金利タイプよりも金利は低く設定されている
- 金利が上昇した場合は返済額が増えるリスクがある
③固定金利選択型
一定期間は固定金利で、固定期間が終了した後は、固定か変動か選びなおすタイプ
- 固定金利の期間は自分で選択できる
- 返済期間中に固定金利にしておきたい期間がある場合などに選ぶとよい
(例:子供の教育費用が多めに必要になる時期など)
金利の3つのタイプごとに一長一短があり、最終的にどのタイプが「一番得をする」といった判断はできません。なぜなら、将来的に金利が上がるのか下がるのか、市場金利の動向は完全に予測できるものではないからです。
基本的に、変動金利型は繰上返済をして早期に完済を目指す方向きです。フラット35は市場の金利の動向に振り回されたくない方に向いていると言えます。
1-2.民間金融機関の住宅ローンとの比較
フラット35と民間金融機関の住宅ローンとの違いを比較してみましょう。民間の住宅ローンは、各金融機関によって特色があり、制度や審査基準も異なっていますが、ここでは一般的な民間の住宅ローンと比較します。
◎フラット35と民間金融機関の住宅ローンの比較
フラット35 | 民間の住宅ローン | |
金利タイプの取り扱い | 全期間固定のみ | 3つのタイプ全て |
保証人 | 不要 | 必要 |
保証料、繰上返済手数料 | 一切かからない | かかる |
団体信用生命保険加入 | 任意 | 必須 |
職業の制限 | なし | 各金融機関によって 異なるが、審査が厳しい |
融資金額 | 原則、物件価格の9割まで | 物件価格の総額+諸費用 |
フラット35はさまざまな職業の方が借入しやすいことがわかりますね。気をつけなくてはいけないことは、融資金額がフラット35は原則、物件価格の9割までのため、ある程度の自己資金が必要になることです。ここは見落としがちなので注意しましょう。
2.フラット35のメリット・デメリット
フラット35のメリットとデメリットです。フラット35の主なメリットは、民間の金融機関の住宅ローン審査に比べて比較的緩いので、民間の住宅ローン審査が通らない方でも申し込むことができるところです。デメリットは金利が固定されてしまうことで、今後の世の中の金利の動きによっては、損をしてしまうことがあるというところが大きいでしょう。
◎フラット35のメリット
- 全期間固定金利で返済計画が立てやすい
- 保証人が不要
- 年収が低くても申し込める(借入可能)
- 非正規社員や自営業でも申し込める(借入可能)
- 勤続年数が短くても申し込める(借入可能)
- 産休中・育休中・介護休暇中でも申し込める(借入可能)
- 団体信用生命保険に加入しなくても良い(民間の場合は必須)
- 健康状態に不安がある方も申し込める(借入可能)
◎フラット35のデメリット
- 金利が高めに設定されている
- 市場の金利が下がった場合でも申込時点の金利のままになる
- 団体信用生命保険(団信)への加入が任意のため、団信加入希望の場合は費用が余計にかかる
- 繰り上げ返済ができる金額が高い(最低10万円〜)
- 用意できる自己資金が1割未満の場合と、自己資金が1割以上の場合で金利の差が大きくなる
3.フラット35の利用の条件
フラット35が利用できる条件をみていきましょう。フラット35の特徴のひとつですが「物件」に審査基準が設けられています。
民間金融機関の住宅ローンの審査の場合、「安定した収入があるかどうか(返済能力があるか)」が中心に審査されますが、フラット35の場合は主に物件の条件が審査され、適合証明書の提出が必須となっています。これは「家の価値」を重視して審査を行うからです。
適合証明書とは
適合証明書は建築する住宅が住宅金融支援機構の定める技術基準(耐久性や維持管理状況など)に適合しているかどうか、適合証明検査機関に申請して物件検査を受けることで交付されます。検査自体は1時間ほどで終わりますが、適合証明書発行までに2週間程度かかり費用もかかります。おおよそ10万〜15万円程度(自己負担)
検査について、くわしくはこちらを確認してください。
フラット35の審査に通るためには、最低条件として住宅金融支援機構が定める「技術基準」をクリアしている必要があります。ここで、技術基準について確認をしておきましょう。
◎基準項目と概要(一部抜粋)
一戸建て住宅等 ※連続建て住宅及び重ね建て住宅含む | |
接道 | 原則として一般の道に2m以上接すること |
住宅の規模 ※住宅部分の床面積 | 70㎡以上 |
住宅の規格 | 原則として2つ以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびにキッチン、トイレ及び浴室が設置されていること |
併用住宅の床面積 | 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 |
戸建型式等 | 木造の住宅は一戸建てまたは連続建てに限る ※木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造の住宅以外の住宅 |
断熱構造 | 住宅の外壁、天井または屋根、床下などに所定の厚さ以上の断熱材を施工(断熱等性能等級2レベル以上) |
住宅の構造 | 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合 ※.準耐火構造には、省令準耐火構造を含む ※耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準 |
配管設備の点検 | 点検口等の設置 |
区画 | 住宅相互間等を1時間準耐火構造等の界床・界壁で区画 |
フラット35が利用可能な技術基準で建築できることをセールスポイントとして明確に打ち出しているハウスメーカーもありますし、基本的にこれから建築される家は、フラット35が利用できる基準で作られるはずです。
とはいえ、土地の面積や形状の問題などによっては、基準内で建築できない可能性もあるので、フラット35を利用したいと考えているのであれば、施工を依頼するハウスメーカーなどに必ず事前に確認をしておくことをお勧めします。
◎高品質の家を建てると金利が優遇される
さらに、質の高い家であればあるほど金利が優遇される仕組みとなっており、技術基準の高い家であれば、フラット35よりも一定期間金利が低くなる「フラット35S」を利用することができます。
家の性能によって、金利Aプラン(金利引き下げ期間10年)とBプラン(金利引き下げ期間5年)があります。くわしくは公式サイトでご確認ください。
注意:フラット35Sには予算金額があり、予算金額に達する見込みとなった場合には、受付が中止されます。
4.フラット35に向く人・向かない人
フラット35に向く人・向かない人を確認しておきましょう。金利変動型の住宅ローンは市場の金利動向について定期的に調べる必要があり、経済や金融の動きを敏感に察知するのが苦手なタイプの方は、金利がずっと固定のフラット35は向いているでしょう。
また、フラット35の審査は民間の住宅ローン審査よりも時間がかかるので、スケジュールにあまり余裕がない人は避けたほうがいいですね。どうしても利用したい場合は、施工会社などに協力をしてもらいスケジュール調整をしっかりしておくようにしましょう。
【フラット35に向く人】
- 長期間借入をしたい人
- 収入が少ない人
- 非正規で働いている人や自営業の人
- 転職したばかりの人
- 金利の動向を調べるのが面倒な人
- 市場の金利動向に一喜一憂したくない人
- 健康状態に不安がある人
- 高品質住宅を建てる予定の人
【フラット35に向かない人】
- 頭金が少ししか用意できない人(頭金が少ないと金利が高くなるため)
- 少しでも金利が低い住宅ローンを利用して早めに完済したい人(フラット35の場合、最低15年は借入しなくてはならないため)
- 住宅ローンの融資実行までのスケジュールに余裕のない方も避けたほうが無難(適合証明書の発行に最低2週間はかかり審査も時間がかかるため)
5.まとめ
フラット35は民間金融機関の住宅ローンよりも審査が緩めなので、誰でも利用することができるのが最大のメリットです。非正規だから、転職したばかりだから、と家を買うのをあきらめかけていた方も、 フラット35を利用すれば、理想の家を持てるかもしれません。
今は、空前の低金利時代と言われていることもあり、固定金利で将来も安心と考える人も多くいます。しかし、全期間固定金利タイプであることは、メリットに感じる人もいればデメリットに感じる人もいると思いますので、ご自身の感覚や適性と経済状況を考慮したうえで選んでいただければと思います。
ここでご紹介したフラット35の特徴はあくまでも基本情報ですので、利用を考えている方は必ず公式サイトを確認するようにしてください。
賢くローンを組んで、素敵な家を建ててくださいね。
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