話し合いに役立つ!二世帯住宅の間取りを考える5つのポイント【事例アリ】

話し合いに役立つ!二世帯住宅の間取りを考える5つのポイント【事例アリ】

二世帯住宅も、単世帯の住宅も、間取りの考え方は変わりません。その空間に住む人のことを第一に考えて、家族全員が満足できる形を模索すればいいわけです。

ただ、核家族化が進んだ昨今、親子世帯の関係性も微妙に変化しました。そのため、二世帯住宅の間取りを考えるときは、単世帯の時とはまた違った気遣いや配慮が必要になります。

コミュニケーションの取り方は家族のありようによって違ってきますが、いずれの場合も、二世帯住宅の定番の形を知っておくと、話し合いのいい叩き台になります。

このページでは、そうした二世帯住宅の間取りの基本的な知識を、事例を交えながら解説していきたいと思います。

この記事がおすすめできる人

  • 二世帯住宅の間取りの定番の形が知りたい人
  • 定番の形ごとのメリット・デメリットが知りたい人
  • 二世帯住宅の間取りの事例が見たい人
  • 間取りを考えるコツを把握したい人

なお以下の記事では「注文住宅」を建てる時のお役立ち知識を解説しています。ぜひ、本記事と併せてご覧ください!

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二世帯住宅の間取りを考えるときの5つのポイント

電球

まずは、二世帯住宅の間取りを考える時に押さえておきたいポイントを解説します。

世帯それぞれで要望を洗い出す

二世帯が最初から一緒に間取りを考えようとすると、お互いに遠慮が生まれて、家族全員の要望が十分に反映されない住宅になってしまう可能性があります。

そのため、一番最初は、世帯別に希望を洗い出すのがおすすめ。その上でお互いの要望を持ち寄り、設計担当にも相談しながら理想の形を探っていくようにすると良いでしょう。

もちろん、別々に考えても親世帯は子世帯を、子世帯は親世帯を優先してしまうかもしれません。しかし顔を合わせて意見を戦わせるよりは、細かい要望を拾いやすいはずです。

間取りの目的をはっきりさせる

家づくりのどの段階でも言えることですが、周りの意見に流されず、自分たちの意見をはっきり持っておくことが大切です。

極端に言えば、大多数が勧める間取りと真逆の住宅を建てたとしても、住む人が快適に過ごせているなら、それは住宅として大正解と言えます。

そのためにも、各間取りの目的を洗い出しておくことが大切。「OOだからXXしたい」というように要望の根拠を浮き彫りにしておけば、万が一その要望が叶えられなかった場合にも、代替案を考えてもらえる可能性が高まります。

もちろん、自分たちの考えを整理する上でも、感覚的な要望を下地にするより、ずっと生産的に意見を出し合うことができるはずです。

日当たりに配慮する

  住宅は立体ですから、その中で空間を分けようとすると、当然ながら日当たりのいい部屋と悪い部屋が出てきます。

採光は、人の気分に大きな影響を与える重要な要素。個室を割り振る際に日当たりを考慮しておかないと、後になって遺恨が残らないとも限りません。

たとえば北側の部屋であっても、窓を大きく取ったり、住宅の真ん中に中庭を設けたりすれば、それなりの採光は確保することができます。

もちろん、自分たちで解決策を考える必要はありませんが、業者に相談する際にしっかり問題提起できるよう、日当たりについては強く意識しておくことをおすすめします。

家族の将来も考慮する

子供はいつまでも小さくありませんし、大人はいずれ足腰が弱くなっていきます。

将来的には、住宅に手を入れる必要も出てくるでしょう。そうしたときのことを考えて、リフォームしやすい設計にしておく、ということも意外に重要なポイントです。

たとえば後から手すりを設置する前提で壁の材質を選んだり、壁やパーティションを追加する前提で大きな子供部屋を作ったり、といった具合です。

よくある間取りの失敗例を知る

自分たちの要望を突き詰めることも大切ですが、経験者の声を聞き、同じ失敗を避けるというのも同じくらい重要です。

Q&Aサイトで少し調べれば、二世帯住宅で後悔したエピソードは無数に出てきます。家づくりの早い段階でこうした失敗談を知っておくと、より理想に近い住宅に仕上げることができるはず。

ちなみに、よく見る失敗の例としては以下のようなものが挙げられます

  • テレビが一箇所でしか見られず、いつも譲っている。
  • キッチン・リビングを共用にしたが、私室にまで臭いが漂ってきて煩わしい。
  • 日当たりを考慮しなかったせいで私室が常に暗く、過ごしづらい。
  • トイレを居室の隣に設置したせいで、周囲が静かだと排泄音が聞こえてくる。

二世帯住宅の間取りの3タイプ

設計図

続いて、二世帯住宅の定番の間取りについて見ていきましょう。以下の通り、大きく3つのタイプがあります。

  • 完全分離…文字通り住空間を完全に分けてしまうタイプ。
  • 完全同居…二世帯が1つの家族として暮らすタイプ。
  • 一部共用…玄関など、一部を共有するタイプ。

この3つです。

細かく分けようと思えばもっとたくさんありますが、基本的には、この3種類のいずれかをアレンジしたものと言えます。

まずは、この3つの間取りのメリット・デメリットを見ていきましょう。

完全分離

設計図

近年注目されているのが、同じ住宅のように見えて、入り口から住空間までをきっぱり分けてしまう完全分離型。

世代が違うと、食事や入浴の時間にもズレが生まれます。いくら家族と言えども、生活リズムの食い違いが大きいと、少なからずストレスを感じてしまうもの。

そこで、アパートのように二世帯の生活空間にはっきり線引きを行い、近居より近く、同居より遠い、適度な距離感の完全分離型の間取りが人気を集めているというわけです。

メリット

  • 世帯同士のプライバシーを確保できる。
  • 相続税の負担を減らせる。
  • 将来的に単世帯になった場合に、少し手を入れるだけで賃貸することができる。
  • 何らかの事情で売却が必要になった場合、完全同居タイプや一部共用タイプの間取り比べて買い手がつきやすい。
  • 遺産相続人が複数いる場合、財産分与がやりやすい。

完全分離型の二世帯住宅は、見方を変えれば2棟の住宅と考えることもできます。

お互いの生活に干渉せずに過ごせるわけですから、家族として適度な距離感を保てますし、多少リフォームをすれば第三者同士が暮らすのに十分なプライバシーも確保できるでしょう。

また、将来的にライフスタイルや家族構成の変化などがあった際に、比較的柔軟に資産の分割、売却ができるというのも大きなメリットと言えます。

デメリット

  • 設備も分離することが多く、他の2つのタイプの間取りに比べてコストが高くなりがち。
  • はっきりと線引きされている分、意識しないと世帯間の交流が乏しくなってしまう。

間取りを完全分離したとしても、設備を共有していると、光熱費などの面でお互い気を使ってしまいます。

また、将来的に売却を考えたときにも、売れにくい要因の1つになってしまいます。

そのため、設備も2つ用意するのが主流。ただこの場合、掛かるコストもその分増えます。二世帯住宅はただでさえ高コストですが、完全分離の場合は特に顕著。これが、完全分離型の間取りを採用する大きなデメリットです。

メリットが多く、人気も高い完全分離型ですが、費用の問題は事前にしっかりと相談して話をつけておくことが大切です。

完全分離型の間取りが向いているケース

完全分離型の間取りは、世帯同士が自立していて、適度な距離感を保っている場合に向いています。

また、どちらかの世帯が社交的で、家に人を招くことが多かったり、逆に人に気を遣うタイプで、義家族とのやりとりに気疲れしてしまったりする場合にも、生活空間ははっきり分けたほうが無難。

一時のことではなく、10年、20年とその生活が続くことを考慮して、全員が快適に過ごせる住まいを考えてみてください。

完全同居

ビルディングプラン

完全同居型は、1つの住宅に2つの世帯が暮らす住宅です。

設備や住空間を共有する分、建築コストは安くなりますが、世帯間のプライベートが確保しづらいというのがデメリット。

よほど世帯同士の仲が良ければ別ですが、個人主義が浸透しつつある昨今では、慎重に検討した上で採用するかどうかを決めないと、後々トラブルに繋がる可能性もあります。

3つある二世帯住宅のタイプのうち、もっとも向き不向きが別れる間取りと言えるでしょう。

メリット

  • 家事をする人が増え、生活が楽になる。
  • 家族のメンバーに多様性があり、子供の情操教育に良い。
  • 他の2つの間取りタイプに比べ、建築費が安い。

ケースバイケースですが、多くの場合、完全同居にすることで家事の担い手が増え、一人当たりの負担が軽くなります。

また、設備や住空間をはっきり分ける場合に比べて、建築費を低く抑えられるというのもメリットと言えるでしょう。

デメリット

  • 気を使いあって、リラックスできない可能性がある。
  • 将来的に住宅を売却することになった場合、買い手がつきづらい。
  • 財産分与しづらい。

老後の生活を送る親世帯と、働き盛りの子世帯とでは、生活リズムに大きなズレが発生します。住み始めた時はまだ現役かもしれませんが、将来的には引退して、ゆとりある老後を送る人が大半でしょう。

生活リズムにズレがあると、お互いがお互いに気を使って、なかなかリラックスできませんよね。また、万が一世帯間の関係が悪化してしまった場合、完全同居だと当事者以外も居たたまれない生活を送ることになってしまいます。

こうした、家族間の問題に対処しづらいというのが、完全同居の大きなデメリットと言えるでしょう。

また、将来的に売却、ないし賃貸するとなった場合に、完全同居だと買い手、買い主ともに見つかりづらいというのも見逃せない欠点です。

完全同居の間取りが向いているケース

義家族同士の仲が良く、家事や仕事を任せたり、任せられたりすることに気疲れしない関係性であれば、完全同居は魅力的な選択肢となるでしょう。

実質的に2棟分の費用が掛かる完全分離などと違い、建築費が安上がりで済むというのも利点。食費や光熱費などのランニングコストも、家計を2つに分けるよりも節約が見込めます。

一部供用

フロアプラン

一部共用の二世帯住宅とは、玄関やキッチンなどを共用とし、それ以外を世帯別に分ける、寮やシェアハウスのようなイメージの住宅。

それぞれのプライバシーは確保しつつ、世帯間が疎遠になりすぎない、バランス型の間取りと言えます。

メリット

  • プライバシーの確保と世帯間コミュニケーションのバランスが取れる。
  • 設備を共有にすることで、建築コストが抑えられる。
  • 住空間は繋がっているため、別室にいても家族同士のつながりを感じられる。

一部共用型のメリットは、適度な距離感を保ってお互いの住空間を尊重できること。

また、完全に設備を分離する場合と比べて、建築コストが抑えられることが挙げられます。土地の広さが限られている場合なども、共用スペースがある分、他の2つのタイプの間取りより私室に多くの空間を割り当てられる点もメリットと言えるでしょう。

デメリット

  • 生活リズムがズレていると、お互いにストレスを感じる可能性がある。
  • もしもの場合に買い手がつきづらい。
  • 財産分与しづらい。

設備を共有していると、生活音がストレスになることが考えられます。特に生活リズムがズレている場合などは、音を出す方も、聞かされる方も、気疲れしてしまう可能性が。

また、共用空間の使い方についても、事前にしっかりルールを定めておかないと、後々軋轢を生むきっかけになってしまうかもしれません。

完全同居に比べて自由度は高いですが、それでも世帯間で住宅の使い方に関してしっかり相談しておくことが大切です。

一部共用の間取りが向いているケース

世帯同士のコミュニケーションは重視したいものの、プライバシーも確保したい、というような場合は、一部共用の間取りが向いているでしょう。

また、一部共用とする場合、どこのスペースをそれに充てるかで、生活への影響もだいぶ変わってきます。

そうしたデリケートな事柄について、ある意味ドライに、客観的な相談ができる関係性があるなら、完全分離型にするよりも低コストな分、一部共用の方が有力な選択肢になってくるはずです。

タイプ別に見る間取りの実例

メリット・デメリットに続いて、二世帯住宅のタイプ別に、間取りの事例を見ていきましょう。

完全分離

完全分離の間取り1

完全分離の間取り2

完全分離の間取り3

※画像引用元:適度な距離感が心地いい完全分離の二世帯住宅 - 実例紹介 - パナソニック ホームズ - Panasonic

敷地面積231.11平方メートル
延床面積327.32平方メートル
1階面積107.94平方メートル
2階面積109.69平方メートル
3階面積109.69平方メートル

1階をビルトインガレージとし、2階を親世帯、3階を子世帯に分けた完全分離型の事例です。

両フロアとも、居室を南側に、LDKを北側に配置し、プライベート空間の日当たりを確保。パブリックスペースにも適宜窓が切られており、住宅全体が明るくなるよう配慮されています。

水回りの配置は概ね揃えられていますが、2階のリビング横には畳スペースが設けられていたり、キッチンの角度が違っていたり、二世帯住宅という制限の中で上手にそれぞれの要望を形にしていることが伺えます。

ちなみに、将来的には親世帯が1階で暮らすことも想定して、1階の奥には客間として使える和室やリビングなども設けているとのことです。

完全同居

完全同居の間取り1

完全同居の間取り2

※画像引用元:完全同居タイプの施工事例|二世帯住宅|ササキハウス

敷地面積259.14平方メートル
延床面積172.24平方メートル
1階面積78.23平方メートル
2階面積86.90平方メートル

必要十分の数の個室だけを設けた、完全同居型の二世帯住宅の事例です。

1階は、玄関の右手に空間をダイナミックに使ったLDK、左手に2間続きの和室。反対側に、寝室や水回りをまとめた間取りとなっています。

2階には、寝室が1つと居室が2つ。各部屋とも収納が完備されているほか、窓も設置されており、風通しや採光にもしっかり配慮されていることが伺えます。

また、バルコニーが設けられている点にも要注目。洗濯物を干せるのはもちろん、BBQをするなど、二世帯での団欒を楽しむのにもぴったりです。

一部供用(玄関供用)

一部共用の間取り1

一部共用の間取り

※画像引用元:両親への感謝を込めて、快適な二世帯住宅を実現 - 実例紹介 - パナソニック ホームズ - Panasonic

敷地面積208.10平方メートル
延床面積208.42平方メートル
1階面積97.97平方メートル
2階面積110.45平方メートル

1階を親世帯、2階を子世帯という形で住空間を分け、玄関や浴室を共有する二世帯住宅の事例。

1階のリビングは、兄弟世帯が集まったときに備えて大きく空間を確保。畳スペースも含めると、約28畳もの広さになるのだとか。

また、ダイニングテーブルとひと続きに配置されたキッチンも、機能的で使いやすそうです。

2階は浴室がない分、居室を多く確保。南向きに配置されたリビングは吹き抜けとなっており、明るく開放的なくつろぎスペースが実現されています。

まとめ

  • 二世帯住宅の間取りには、「完全分離」「完全同居」「一部共用」という3つの種類がある。
  • 基本的には、世帯間の関係性やライフスタイルを踏まえて選択する。
  • 二世帯住宅の間取りを考えるときは、各世帯で別々に希望を洗い出してからすり合わせる形がスムーズ。
  • その間取りを希望する目的をはっきりさせておくと、業者との話し合いを建設的に進めることができる。
  • 各部屋とも、日当たり、風通し、防音の3つがしっかり確保されているか、妥協なくしっかりシミュレーションしておく。

快適に過ごせる間取りは、人によって大きく違います。いくら専門家が考えた間取りであっても、住まい手の要望が前提になっていなければ、快適に使える住宅にはならないでしょう。

理想を形にするためには、基本的な知識をもとにして、自分たちで考えを煮詰めていく必要があります。

このページの情報が、そうした機会の一助になれば幸いです。

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