注文住宅の階段を考えるときの5つの基本

注文住宅の階段を考えるときの5つの基本

注文住宅を建てる時、階段を第一に考える人はあまりいません。

リビングや玄関といった他の部位に合わせて、配置やデザインなどが決められていくことがほとんどです。

注文住宅は自由度が高いだけに、考えるべきことが山ほどあります。収納やキッチン、リビングといった日常生活に深く関わる部位と比べて、階段の優先度が低くなってしまうのは仕方のないことでしょう。

しかし、階段のありよう1つで住空間の雰囲気がガラリと変わることは少なくありません。動線が集中するポイントでもあり、生活の利便性にも深く関わっています。

階段の考え方を少し知っておくだけで、家づくりの選択肢はグッと広がることでしょう。

このページでは、注文住宅を建てる時に押さえておきたい階段の基本知識を、5つに絞ってまとめてみました。これから家づくりを考えている人は、ぜひ参考に目を通してみてください。

この記事がおすすめできる人

  • 注文住宅を建てようとしており、階段のイメージが固まらずに悩んでいる
  • 階段をつくるときの基本的な知識を知りたい
  • 階段の構造の種類を知りたい
  • リビング階段や玄関ホール階段などのメリット・デメリットが知りたい
  • 階段をオシャレに見せるコツを知りたい人

なお、以下の記事では「注文住宅」について詳しく解説しています。ぜひ、本記事と合わせてご覧ください!

階段の種類は大きく5つ

階段は大きく以下の5種類に分けられます。どの階段も、基本的にはこれらから派生してできあがります。

1つずつ見ていきましょう。

直階段

直階段

※画像引用元:直階段|階段|間取り(プラン)イメージヒント集|セキスイハイム

文字通り、まっすぐ上がっていく階段です。ある程度の広さや長さが必要ですが、玄関とリビングとの間に設置するなどすれば、自然な形で生活空間と来客空間を分けることができます。

また、作りがシンプルで、もっとも低コストな階段です。

デメリットとしては、限られたスペースに設置する場合に勾配が急になり、また直線であることから、転んだときのリスクが増すことが挙げられます。

かね折れ階段

かね折れ階段

※画像引用元:階段|間取り(プラン)イメージヒント集|セキスイハイム

かね折れ階段は、踊り場で90度横に折れている階段。構造上、建物の端に配置されることが多いです。

踊り場がある分、直階段より安全性は高いですが、無意識に昇降していると、踊り場で逆に足を取られてしまう可能性もあり、手すりは必須。

視点が途中で切り替わるという面白さがあるためか、注文住宅の建築事例などでは、かね折れ階段を吹き抜けにして、開放感を出しているものが多く見受けられます。

折り返し階段

折り返し階段

※画像引用元:かね折れ階段|階段|間取り(プラン)イメージヒント集|セキスイハイム

踊り場で180度折り返す階段です。かね折れ階段がL字だとすれば、折り返し階段はU字に上がっていきます。踊り場が広く、転んだ時に下まで落ちてしまう危険性も小さいです。

多くの場合、階段の配置は廊下の数に直結します。折り返し階段は省スペースで設置できますから、住宅の中央などにレイアウトすれば、廊下を少なくして住空間をより多く確保することができるでしょう。

カーブ階段

カーブ階段

※画像引用元:【SUUMO】 螺旋階段の圧倒的な存在感。玄関に足を踏み入れた瞬間にその優美さに魅了される、美しき輸入住宅 - ブルースホーム  の建築実例詳細 | 注文住宅

途中でカーブを描く階段です。直線で構成する階段に比べ、どこか柔らかい、優雅な印象を与えてくれます。

輸入住宅などでは、玄関の正面などに装飾的に配置することが多いです。一般的な住宅とは一味違う、洒脱な雰囲気を演出するのに向いた階段と言えるでしょう。

らせん階段

螺旋階段

※画像引用元:螺旋階段のある家 | 施工事例 | リフォーム・リノベーション・新築ならスタイル工房

柱を軸に、螺旋状にステップを上がっていくお馴染みの階段です。全体は円柱状であり、直線の階段に比べてスペースを節約できるのが大きなメリット。

他の階段と比べてコストは掛かりますが、見た目のオシャレさから高い人気を誇っています。

ただ階段の幅によっては、上階に大物の家電・家具を持ち上げるのが難しくなってしまうというデメリットも。

外観の種類は大きく3つ

積み上げられた本

構造だけでなく、外観も、階段の見栄えや使い勝手を左右する重要な要素。こちらは、大きく箱型・ストリップ型・ひな壇型の3つに分けられます。

箱型

まず最もポピュラーなのが、箱型階段。文字通り長い箱を段々に積み重ねたように見える階段で、見た目よりも実用性を重視した構造をしています。

箱状、と言っても、踏み板と、それを支える蹴り込み板で箱のように見えているだけですから、階段下のスペースは収納やトイレとして活用することが可能。

また、他のデザインに比べてリーズナブルに作れるというのもメリットと言えるでしょう。

ただ、視線が抜けるスペースを設けるのが難しく、どうしても圧迫感や野暮ったさが出てしまうのがデメリット。

壁に沿わせる形で片側をスケルトンの手すりにしたり、階段下を全面本棚の見せる収納としたり、工夫次第でオシャレに見せることはできますが、構造そのものが洗練されているストリップ階段などに比べると、デザインが難しい側面があります。

ストリップ型

ストリップ階段は、一言で言えば踏み板だけの階段。オープン階段やスケルトン階段とも呼ばれます。

視線が階段の向こう側に抜けるため、開放感のある雰囲気を演出することができます。

箱型階段よりもコストは掛かりますが、デザインを工夫すれば、住空間を洗練させてくれる据え置きのインテリアのように活用することも可能。

じっさい、ストリップ階段に観葉植物やちょっとしたアイテムを配置してオシャレな空間を演出している事例は無数にあります。

また、光を遮らないため、吹き抜けのあるストリップ階段をリビングに設置して、明るいくつろぎスペースを実現するというのも、よく見られるスタイルです。

ひな壇型

箱型階段やストリップ階段ほど知名度は高くありませんが、ひな壇型の階段というのもあります。

これは、ステップの一部を、壁からあえてはみ出させるというタイプ。

たとえば玄関に面する壁に直階段を沿わせて、下側の半分までを露出させる、というような構造の階段です。箱型階段やストリップ型階段の変則的な形、とも言えますね。

限られたスペースで、洗練された雰囲気を演出するのに向いたスタイルです。

配置する位置ごとにメリット・デメリットがある

設計図

近年はリビングに階段を設置するスタイルが流行っています。

開放感のあるくつろぎスペースを演出できる、2階に上がるために必ずリビングを通るため、子供が大きくなったとしても毎日確実に顔を合わせることができる、というのが、リビング階段でよく語られるメリットです。

確かに魅力的なのですが、注意したいのが、デメリットも少なからず存在するということ。実際、リビング階段にして後悔している人も少なくありません。

続いては、階段の主な配置ごとに、メリット・デメリットを掘り下げて見ていきたいと思います。

リビング階段

多くの住宅では、上階へ上がる手段は階段だけです。そのため、階段には自然と動線が集まってきます。

つまり階段をリビングに設置すれば、リビングにも自ずと家族が集まりやすくなるわけです。家族間の触れ合いも増えますから、子供の情操教育にもいい影響が期待できますよね。

もちろんライフスタイルはそれぞれですが、もし一家団欒を重視するなら、リビング階段は魅力的な選択肢の1つと言えるでしょう。

ただ、もちろんデメリットもあります。もっともわかりやすいのは、来客があった場合。リビングに人を招くと、家族が客人と顔を合わせしまうことになります。

また、子供が自室に友達を連れてくることも考えられます。リビングでくつろぐ姿を第三者に見られるのはちょっと抵抗がありますよね。

階段はそのまま2階の廊下に繋がっているわけですから、断熱性や機密性をしっかり考えておかないと、電気代がすごいことになってしまうケースも。防音についても、リビングの音が個室に響き過ぎないよう、入念に検討しておく必要があります。

玄関ホール階段

玄関ホール階段は、文字通り玄関ホールに階段を配置するスタイルです。

家に入ってすぐに2階へ上がれるため、リビング階段のように来客者と顔を合わせる心配がない点がメリット。

階段は廊下とのみ繋がっている構造になりますから、空調や防音などにもそこまで配慮する必要はないでしょう。

デメリットは、リビング階段とは反対に、家族同士で顔を合わせる機会が減ってしまうということ。

個室の割り振りを工夫すれば解決できる問題ですので、そこまで大きなデメリットではありませんが、家族同士の触れ合いを重視するなら慎重に検討しておきたいポイントと言えます。

オシャレに見せるには全体のバランスが重要

崩れた木のブロック

注文住宅にぴったりの階段を形にするには、大枠で捉えるのではなく、階段を形作っているパーツを知り、全体のバランスを見ながら設計・デザインを考えていくのがおすすめ。

続いては、階段を形づくる様々な要素についての基本的な知識を見ていきましょう。

手すりについて

手すりの目的は、落下や転倒を防ぐことですが、よく目につく部位だけに、あまりシンプルすぎても味気ないですよね。

階段の見た目が普通でも、手すりをちょっとデザイン性のあるものに変えるだけで、ガラリと雰囲気を変えることも可能です。

たとえばロートアイアン風の曲線美がある手すりを壁に直接設置したり、構造的な面白みのある桟をつけて見せる階段にしてみたりといった具合です。

ちなみに桟には、以下のような種類があります。

  • 縦桟(たてざん)…手すりを縦向きの骨組みが支えているタイプ。
  • 横桟(よこざん)…縦を少なくし、横方向にも部材をわたしているタイプ。

縦桟に装飾的な部材を採用したり、横桟にガラス板を入れたりして洗練された雰囲気を演出するスタイルもよく見られます。

桁について

階段を支えるための桁も、外観の印象を大きく左右する要素の1つ。以下のように大きく3つのタイプに分けられます。

  • 一本桁…モノレールのように、階段の中央に1本の桁を通して支えるタイプ。
  • 側桁(がわげた)…踏み板を両側から桁で挟むタイプ。
  • ささら桁…板を階段の段状にギザギザに切り、そこに踏み板を乗せて下から支えるタイプ。

段数ついて

階段の1ステップあたりの高さは23cm以下、踏み板の奥行きは15cm以上、というのが建築基準法で定められているボーダーです。

階段の段数を考えるときは、これを踏まえて、傾斜や段数を決定していくこととなります。

ちなみに天井の高さは、法律では210cm以上。平均的には240cm前後になることが多いです。2階の床の高さは30〜50cmほどですから、1ステップあたり23cmで段数を作る場合、12〜13段が目安と計算できます。

ちなみに、平均的には、これよりもう少し緩やかな14〜15段が採用されることが多いです。

階段に使えるスペースや天井高、家族構成などによって使いやすい階段は違ってきますから、こうした平均的な数字を下地に、自分たちのケースに当てはめて検討されることをおすすめします。

素材について

階段の主な素材は木や鉄ですが、どちらか1つに統一しなければならないわけではありません。

たとえば踏み板を明るい色の木材にして、梁を黒い鉄などにすれば、美しいコントラストを演出することができます。

デザインの基本は、揃っていること。階段の素材を選ぶときも、住宅全体のデザインテイストに合わせて、素材のテクスチャーや色味などを考えていくと、調和の取れた住空間に仕上がります。

照明について

階段の照明を考えるときもやはり、家全体のテイストに合っているか、というのを1つの基準にすることがおすすめです。

形はもちろん、色や素材の質感もチェックして、住空間全体のデザインに馴染むかどうかを検討しましょう。

また、明るさについてですが、階段だからといってむやみに明るくするのは、むしろ危険が伴う可能性も。たとえばそれまでいた部屋が暗かった場合、階段の明るさで目が眩んでしまうことが考えられます。

明るさについても、他の部屋との相対的なバランスを考えて決めると良いでしょう。

基本を踏まえた上で注文住宅の階段実例をたくさんチェック!

単純に知識を増やすだけでは、イメージは膨らみませんよね。かといって、事例だけを見ていても、そのデザインを自分たちのものにするには難しいものがあります。

知識を得ることで、デザインをより深く理解できるようになりますし、多くのデザインに触れることで、逆に調べたいこと、知りたいことが出てきたりもします。

大切なのは、知識と実践のサイクルを上手に回すこと。情報化が進み、少し検索すればデザイン性の高い階段の事例をたくさん見ることができます。自分たちに最適な階段を考えるときは、ぜひこのサイクルを意識して、情報収集をしてみてください。

最後に、オシャレな階段の事例をいくつか紹介してみたいと思います。

省スペースながら開放的で明るい階段

CASE553 LEAF – HOUSE

※画像引用元:CASE553 LEAF – HOUSE

低い位置にある踊り場がある、折り返しタイプのストリップ階段。向かいの壁には天窓が配置されており、降り注ぐ明るい光が印象的です。

踏み板を支える蹴り込み板がなく、視線が抜けるため、開放感もバッチリ。省スペースながらデザイン性に優れる仕上がりとなっています。

スキップフロアを横切るスタイリッシュな箱型階段

CASE532 土間と壁柱のハウス

※画像引用元:CASE532 土間と壁柱のハウス

直階段は住宅の隅に配置することが多いですが、この事例では一番端に廊下が配置され、それを仕切る形で直階段が伸びています。

登り始めはリビングで、3段上の中二階にダイニングキッチンという変則的な構成。箱型階段はやり方によっては圧迫感を与えてしまいますが、こちらの事例は一部の壁を抜いたり、登った先に窓を配置するなどして、見事に開放感が演出されています。

また、スキップフロアからの登り口の2段がひな壇型になっている点にも要注目。この2段があることで、絶妙に階段がオシャレに見えます。

自然素材の木目が映えるリビング階段

【吹き抜け・アウトドアリビング】

※画像引用元:【SUUMO】 【吹き抜け・アウトドアリビング】四季を感じながら家族とふれあう住まいで、自分らしい暮らしをデザイン - SUDOホーム 須藤建設  の建築実例詳細 | 注文住宅

踏み板と蹴り込み板がシームレスに繋がるデザインが目を引く階段です。手すりには、黒い鉄の縦桟を採用。横から見ると、白いささら桁との構造美が目を楽しませてくれます。

住宅全体が自然素材で作られているだけあって、階段全体もそのテイストに合わせた温かみのある仕上がりになっていますね。

ロートアイアンの手すりが美しいカーブ階段

カーブ階段

※画像引用元:【SUUMO】 【1000万円台/間取図】ハンドメイドのキッチンや洗面台,無垢の床にも,温もりがあふれるの輸入住宅 - ロビンスジャパン 川口スタジオの建築実例詳細 | 注文住宅

1段目を広く取り、左の壁をお子さんの作品を飾るスペース、奥の壁を収納として活用しているユニークな階段。手前に設置されたロートアイアンの美しい意匠が目を引きますね。

階段と玄関ホールの境目は天井がアーチ状になっており、吹き抜けの先から降り注ぐ日光と合間って、明るく柔らかい雰囲気を醸し出しています。

英国の古民家を思わせるクラシカルな直階段

イングランドスタイル

※画像引用元:【SUUMO】 【イングランドスタイル】理想は、住むほどに趣を深め価値が高まる、アンティークになっていく店舗併用住宅 - メープルホームズインターナショナル の建築実例詳細 | 注文住宅

抑えた色合いの自然素材で統一された、クラシカルな箱型階段。ステップは木ですが、蹴り込みは左官仕上げとなっており、全体の色合いが重くなりすぎないよう配慮されています。

また、蹴り込みは中央部分がくり抜かれており、中には照明が入っているとのこと。

窓のない壁に挟まれる形の階段は足元が暗くなりがちですが、自然派住宅であってもこうした工夫を取り入れることで、十分な明るさを確保することができます。

まとめ

  • 階段には、「直階段」「かね折れ階段」「折り返し階段」「カーブ階段」「螺旋階段」の5種類がある。
  • ステップには、「箱型」「ストリップ型」「ひな壇型」の3種類がある。
  • 配置する場所は、リビングか玄関が王道。リビングは団欒重視、玄関はプライベート重視に向いている。
  • 階段をオシャレに見せるためには、住宅全体のバランスを考慮した上で、階段の細部にこだわることが大切。

1つひとつの要素はそこまで複雑ではありませんが、これらを組み合わせることで膨大なデザインスタイルが生まれます。家族全員の要望をしっかり掘り下げ、自分たちの注文住宅ならではの階段を考えていただければ幸いです。

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