予防は最高の治療、とよく言われます。病気や怪我の治療は、早ければ早いほど体へのダメージが少なく済み、治るのも早いからです。
早期治療は、早期回復への早道。そして予防は、治療自体を不要にしてしまう最高の治療方法というわけです。
シロアリ対策にも、これと同じことが言えます。もちろん、予防をしたから100%安心という訳ではりませんが、予防する場合としない場合では、被害に遭う確率が大きく変わります。
このページでは、シロアリ予防に関する基本的な知識を解説してみたいと思います。
シロアリ予防のキホン
まずは、シロアリ予防にどういった方法があるのかを見ていきましょう。
予防方法にはどういう種類がある?
具体的な予防法には無数の種類がありますが、系統でいえば大きく2つに分けられます。
侵入される可能性のある箇所を物理的に塞ぐか、シロアリが嫌う環境にしてしまうか、という2つです。
それぞれ、物理的バリア、忌避的バリアと呼ばれています。
物理的バリア
シロアリの侵入口となる場所(主に床下)を隈なくチェックし、ひび割れを埋めていきます。
ただ、目視でシロアリの侵入口となりそうな隙間を見つけることは困難です。多くの場合、忌避的バリアと組み合わせたり、すでに被害が出ている箇所への蟻道(シロアリが壁の表面などに造るトンネル)を断つために行われます。
忌避的バリア
木材や土壌に薬剤を散布して、シロアリの侵入を防ぎます。作業自体は、駆除する場合に行うことと同じです。
ただ、薬剤を散布する前に、シロアリが侵入してきそうな箇所をしっかりリサーチして置かないと、十分な効果が見込めません。
自宅のあるエリアに生息しているシロアリの生態と、住宅の構造、双方を踏まえた上で作業をする必要があるわけです。
DIYも可能ですが、専門知識と経験が求められるため、いずれの方法であってもまず専門業者に相談されることをおすすめします。
早期発見
予防とは少し違いますが、シロアリ被害が100%防げるものでない以上、早期発見できるかどうかで、その後の被害の大きさが決まります。
シロアリ被害に遭っている住宅では、以下のような兆候が見られることが多いです。
- 住宅の中に羽アリが飛んでいる。
- 柱や基礎の部分に、土の筋(シロアリの通り道)がへばりついている。
- 柱や床を叩くと、一部分だけ音が軽い。
- 築年数が古い。
もしこうした兆候が見られたら、なるべく早めに点検を行い、被害を最小限に食い止めましょう。
そもそも予防は必要?
建築基準法では、シロアリの予防は必要に応じて行うこととされています。
実際には、シロアリ被害が多い地域ではほとんど義務に近い形で行われ、そうでない地域では、ハウスメーカーや工務店の裁量に委ねられています。
予防すべきかどうか、というのは、個々人の危機意識によるところが大きいわけです。
ただ、シロアリというのは意外に身近な昆虫です。北海道の一部を除き、全国のどのエリアでも被害に遭う可能性があります。
万全を期すなら、定期的な点検や薬剤による予防を検討されることをおすすめします。
100%予防することはできる?
予防工事をしたからといって、100%被害を避けられる訳ではありません。
しかし、何もしない場合に比べて、被害に遭う可能性を劇的に下げることができます。
また、常日頃から予防意識を持っていれば、住宅の異常を早い段階で発見し、まだ被害が小さいうちに駆除できる確率も高まります。
被害が拡大すると、駆除だけでなく、リフォームや耐震補強工事が必要になってしまうことも。
被害を確実に防げる訳ではないものの、住宅へのダメージや金銭的負担を最小限に食い止めるためには、予防が一番の方法であることは間違いないでしょう。
シロアリが住み着きにくいのはどんな家?
シロアリの種類にもよりますが、日本の大部分に生息しているヤマトシロアリは、土の中に巣を作り、エサ場(住宅に使われている木材)と巣を往復します。
そのため、巣とエサ場の間に障害が多ければ多いほど、被害に遭いづらい住宅と言えるでしょう。
例えば昨今の住宅は底板が鉄筋コンクリートで作られますが、昔はむき出しの土でした。どちらがシロアリ被害に遭いづらいかといえば、当然前者ですよね。
また、シロアリの多くは暗く湿った環境を好みます。構造が同じであれば、日当たりのいい、乾燥した土地にある住宅より、日があまり当たらず、ジメジメした土地にある住宅の方が、被害に遭いやすいと言えます。
早期発見のためにチェックしたいポイント
業者に依頼して施工してもらったとしても、被害を100%防げるわけではありません。
もしもの時に住宅へのダメージを最小限に食い止めるためには、早期発見が非常に重要となります。
続いては、早期発見のために知っておきたい、被害に遭いやすい住宅の特徴を紹介します。
築年数が5年以上
シロアリ被害に遭う建物の多くは、築年数が5年を超えているとされています。大きな理由は、新築時に行われた薬剤処理の効果持続期間が5年前後であることだと考えられています。
シロアリを忌避する力が弱まって、建物にシロアリが入り込んでしまっているわけです。
新築時にシロアリ予防をしていない住宅も少なからず存在するため、あくまで目安ですが、5年間隔が点検の1つの目安になる、ということは知っておくと良いでしょう。
建物にひび割れや傷んだ場所がある
多くの場合、シロアリは土の中に巣を作って、エサ場となる木材(住宅の構造材など)と巣の間を往復します。
昨今の住宅は、コンクリを打って地面から構造を浮かせています。そのため昔より被害には遭いにくいのですが、それでもヒビ割れなどがあると、シロアリはそこから侵入してきます。
コンクリは時間が経つと収縮し、どうしてもひび割れてしまいます。建物のひび割れや傷んだ箇所が目立つようになったら、1度点検されてみると良いでしょう。
家の中にアリがいる
春から夏にかけて、羽アリが巣から飛び立ちます。
シロアリは光を嫌うため、人間の生活圏では滅多に見られません。そのため住宅が蝕まれていてもそれと気づきにくいのですが、羽アリが飛び立つことで被害を自覚することがよくあります。
家の中に胴体が直線的で、同じ大きさの4枚の羽を持つアリがいたら、シロアリ被害を疑いましょう。
また、家の中に木くずや硬い顆粒状の小さな山を見かけた場合も同様です。シロアリが木材を食い散らかした跡の可能性が高いです。
家の土台や柱に土の筋がこびりついている
シロアリは、自分たちの唾液や土を使って、巣から移動するための道を作ります。これによって、苦手とする光を避けるわけです。
地面から土の筋が伸びて住宅の土台や壁面を這っていたら、高い確率でシロアリ被害が予想されます。
なるべく早めに専門家に相談されることをおすすめします。
番外・被害に遭いやすい場所とは
1つの住宅の中にも、シロアリ被害に遭いやすい場所とそうでない場所があります。日本にいるシロアリの多くは日光を嫌い、湿気や温もりを好む昆虫です。
そのため、南側よりも北側の方が、また何でもない床より台所やトイレ、洗面所といった水回りの方が、被害に遭いやすい傾向にあります。
また、高い場所より、地面に近い場所。建物の土台や柱の下部などから食害が拡大していきます。
自分で予防する場合の大まかな流れ
シロアリを駆除するための薬剤は、ホームセンターや通販サイトなどで手軽に手に入れることができます。
そのため、相応の知識と手間をかけるだけの時間があれば、自分でシロアリ予防をすることも可能です。
DIYでシロアリ予防をする際の流れを簡単にまとめてみます。
1.薬剤について知る
まず必要なのは、シロアリ対策に使う薬剤の種類を把握することです。薬剤には、大きく分けて以下の3つの系統があります。
- 侵入を防ぐための薬剤
- 直接駆除するための薬剤
- 後から効果が現れる毒餌
いずれも予防目的で使うことができますが、適切な使い方、組み合わせ方を知らなければ十分な効果は見込めません。
シロアリの生態を踏まえ、侵入経路を想定して処置をしていく必要があります。
2.シロアリの主な侵入経路を知る
DIYでシロアリ被害を予防するためには、被害に遭いやすい場所を重点的に対策することが大切です。
無差別に家全体をフォローしようとすると、非常に手間が掛かりますし、業者に依頼するよりも費用が掛かってしまう可能性があります。
日が当たりづらい、湿気が多い、地面に近い場所に木材がある、等、被害に遭いやすい箇所を絞って、シロアリの侵入経路になりそうな場所に当たりを付けましょう。
3.薬剤を撒く
薬剤を散布する場所を決めたら、説明書きにしたがって木材や土壌に薬剤を散布していきます。
注意したいのが、薬剤の量です。使われている成分やご家族の体質によっては、体調不良の引き金になってしまうことも考えられます。
妊婦さんや小さいお子さんのいる家庭の場合は、薬剤の影響を調べた上で、特に慎重に作業されることをおすすめします。
シロアリ予防業者のススメ
シロアリ予防は自分で行うことも可能ですが、より確実さを求めるなら、業者に依頼すると良いでしょう。
市販品よりも強い薬剤を、専門知識に基いて適切に使用してくれる可能性が高いからです。
シロアリ対策業者とは
普通に生活しているだけではあまり接する機会はありませんが、世の中には、シロアリ駆除を専門的に行っている会社が存在します。
シロアリに関する専門的な知識を持っており、住宅の状況や被害の進行度に合わせて、適切な薬剤、施工を行ってくれます。
駆除以外にも、点検や予防処理なども請け負ってくれるため、シロアリ対策に悩んだらまず検討したい相談先と言えます。
予防のために行ってくれること
業者が行う方法も、基本的にはDIYで行う作業と同じです。
まず点検を行い、シロアリが侵入した形跡や、侵入される危険がありそうな場所を確認。その後、状況に合わせて専門的な施工を施したり、薬剤を散布したりするわけです。
もちろん、業者の一存で勝手に施工が進められることはなく、その必要性や使う薬剤の住空間への影響などが説明されます。
その際に懸念事項(家を傷つけたくない、子供がいるから強い薬剤は使いたくない)等を相談すれば、それに合わせて柔軟に施工方法を調整してもらえたり、不安を取り除くだけの情報を提供してもらったり、専門家ならではの対応をしてもらえるはずです。
費用相場
シロアリ駆除の費用は全国平均で1平方メートル当たり3,575円とされており、基本的にはこの価格を目安に費用の高い・安いを判断されると良いでしょう。
ただ、予防に掛かる費用は業者や住宅の状況により大きく変動するため、一概には言えません。地域によっても差が出ますから、余裕があるなら複数の業者に見積もりをとって、まずは相場感を把握されることをおすすめします。
業者選びのコツ
どのような業種でもそうですが、優良な業者がいる一方で、悪徳業者もいます。
例えば、飛び込みで無料点検を行い、家主の不安を煽って不要な契約を取り付けたり、見積もり時は低価格を装い、後から理由をつけて請求金額を釣り上げたり、というような業者です。
依頼を検討する際は、まず実績や口コミなどを丁寧にチェックし、その業者が信頼に足るかどうかを見極めましょう。
また、日本には、しろあり対策協会と言う社団法人があり、この協会の会員となっている業者は一定の技術力、信用を持っている可能性が高いです。
1つの判断材料として、覚えておくと良いでしょう。
保証について
シロアリ駆除業者は、施工に対して5年の保証期間を設けていることが多いです。
薬剤の効果持続期間が5年であることがその理由なのですが、業者によってはより細かいスパン、より長い期間の保証を用意しているところも。
費用とプランの内容に目が行きがちですが、再発した場合にどのような対応をしてくれるのか、と言う点も、抜かりなくチェックしておきたいところです。
定期点検の大切さ
業者に施工してもらったとしても、シロアリ被害を完全に予防できる訳ではありません。
薬剤の効果も永遠に続く訳ではありませんから、被害を最小限に食い止めるためには、定期点検が非常に重要になってきます。
業者に予防処理を相談する際は、自身の家のどこにシロアリ被害が出やすいのか、チェックすべき部位をあらかじめ確認しておき、事後に自分たちでも定期的に異常がないか確認されることをおすすめします。
シロアリの基本知識
シロアリ被害を予防したり、被害を最小限に抑えるためには、シロアリがそもそもどう言う昆虫なのかを知っておく必要があります。
続いては、シロアリに関する基本的な知識を解説します。
普通のアリとの違い
シロアリ、という名前ですが、実はシロアリはアリの仲間ではなくゴキブリの仲間です。
一般的なアリは黒色で、頭、胸、お腹とくびれがあります。一方シロアリは、文字通り白く、棒のようにまっすぐな体に丸い頭がついています(ただしシロアリでも、羽アリは黒いです)。
土の中に巣を作るところは同じですが、アリが他の昆虫を食べるのに対して、シロアリは枯れた草木を食べます。
また、光を極端に嫌い、巣からエサ場へ移動するために、わざわざ専用のトンネルを自分たちで作る性質があります。
主な種類
一口にシロアリと言っても、その種類は全体で2000種以上にも及びます。
ただ、日本で見られるのは精々20種類弱で、住宅に害を及ぼすのは主に以下の3種類とされています。
ヤマトシロアリ | 北海道の一部を除き、日本に幅広く生息しているシロアリ。湿った環境を好み、床下などから侵入して柱などをエサ場にすることが多い。数万単位のグループがそれぞれ分散して巣を作る。 |
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イエシロアリ | 千葉より西側の太平洋沿岸部に生息しているシロアリ。ヤマトシロアリと違い、1つの巣に100万匹以上が棲んでおり、比較的短い期間で大きなダメージを住宅に与える。 |
アメリカカンザイシロアリ | 乾燥した木材(乾材)を好むシロアリ。家具や木材の輸入によって日本にやってきた。日本古来のシロアリと違い、水分をほとんど必要とせず、食料となる木に直接巣を作る。 |
シロアリは光を嫌うため、意識しなければなかなか目にすることはないでしょう。そのため、自分とは縁遠いものと考えている人も少なくありません。
しかし少なくともヤマトシロアリは、日本国内のどこでも生息している可能性があります。楽観視せず、堅実に予防策を講じられることをおすすめします。
住宅に与えるダメージ
シロアリが住宅に与えるダメージは、その種類や被害を受けていた期間によって様々です。
たとえば日本全域に生息しているヤマトシロアリの場合、住宅が倒壊するなど致命的な被害に発展する可能性は小さいでしょう。
とはいえ、もちろん楽観視はできません。シロアリの食害だけでは倒壊しなくとも、スカスカになった構造が地震や激しい台風に耐えきれずに崩れてしまう可能性もあります。
被害にあった場合にリフォームや耐震補強が必ず必要、という訳ではありませんが、少なくとも住宅の耐久性にどの程度影響を与えたのか、専門家に診断してもらうことが大切です。
まとめ
- シロアリの予防方法には、物理的バリアと忌避的バリアの2系統がある。
- シロアリ被害が多い地域ではほぼ例外なく実施される。
- ただ法的義務ではないため、新築時はハウスメーカーや工務店に事前に予防処置について確認しておくと良い。
- DIYでも可能だが、専門的な知識や経験が予防効果を大きく左右するため、できれば業者に依頼する方が無難。
- 被害を確実に防ぐことはできないため、早期発見のために予防意識を持っておくことが大切。
繰り返しになりますが、シロアリ予防は処理をしたら確実に安全、というものではありません。予想しない経路から被害に遭う可能性もありますし、薬剤の持続効果が切れたら再度処理を行う必要もあります。
常に意識している必要はありませんが、適切なタイミングで、適切な行動を取るためにも、シロアリ被害の兆候については頭の片隅に置いておかれることをおすすめします。
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