住宅購入のために土地選びを始めると、飛び交う専門用語の多さにまず戸惑ってしまうことと思います。
土地というのは、購入すればどんな建物を建ててもいい、という性質のものではありません。建てたい住宅が、エリアごとに法律で定められた条件をクリアしている必要があります。
容積率は、そうした法律で定められる条件の1つです。
このページでは、何かと難しい印象のある容積率の基本知識や、関連する専門用語などについて、なるべくわかりやすく解説してみたいと思います。
目次
この記事がおすすめできる人
- 土地購入を検討していて、容積率の基本知識を把握したい。
- 購入候補に考えている土地に、自分たちの建てたい住宅が建てられるか知りたい。
- 容積率の種類や計算方法が知りたい。
- 容積率の活用方法が知りたい。
- 容積率に関係する専門用語を把握したい。
なお以下の記事でも「土地」や「注文住宅」について詳しく解説しています。ぜひ、本記事と合わせてご覧ください!
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そもそも容積率とは
まずは、容積率がどういうものかについて見ていきましょう。
容積率とは、その土地の広さに対する、建物の全フロアの床面積の合計値の割合です。
例えば30坪の土地で容積率が100%だった場合は、全フロアの床面積の合計が30坪に収まる建物しか建てられません。
このため住宅を建てるときは、その土地に定められた容積率の範囲内で、各フロアにどの程度の広さを割り振るかを決める必要があるわけです。
ちなみに、建物の全フロアの床面積の合計は延床面積とも呼ばれます。容積率の算出の基準になる項目ですから、もしご存知ないようであればこの機会に覚えておくと良いでしょう。
計算方法
容積率は敷地面積に対する延床面積の割合ですから、計算式は以下のようになります。
- 容積率 = 延床面積 ÷ 敷地面積
とはいえ、容積率は用途地域ごとにあらかじめ決められているものです。実際に計算することはほとんどないでしょう。
詳しくはシミュレーションの項で解説しますが、容積率は建ぺい率と併せて、土地に建てられる建物の大きさの限度を計算するために使います。
種類
一般に容積率という場合、用途地域ごとに建築基準法で定められている数値を指します。
これを指定容積率というのですが、実は指定容積率以外に、基準容積率という種類もあります。
それぞれ簡単に見ていきましょう。
指定容積率
前述の通り、用途地域ごとに定められる容積率です。住居向きのエリアほど小さく、商業向きのエリアほど大きい傾向があります。
容積率は敷地面積に対する延床面積の割合ですから、容積率が大きいほど高い(=フロア数の多い)建物が建てられるわけです。
基準容積率
基準容積率は、その土地ごとに独自に決められる容積率のことです。
例えば面している道路の幅が極端に狭い土地などの場合は、指定容積率と基準容積率のうち、小さい方が採用されます。
ちなみに、基準容積率は以下のように計算されます。
- 幅員が12m未満…用途地域によって、幅員に40%、または60%を掛けた数字が容積率の上限になります。
- 幅員が4m未満…幅員が4m未満の場合は、4mとして過程し、160%、240%のいずれかが基準容積率の限度になります。
土地の容積率の調べ方
「エリア名 容積率」や「エリア名 用途地域」などで検索すると、各地方自治体が公開している情報にアクセスできることが多いです。
もしウェブ上に公開されていない場合は、市役所の都市計画の窓口を訪ねれば、容積率が記載されている都市計画図という図面を見せてもらうことができます。
無視するとどうなるか
容積率は、建築基準法で定められているものです。意図的にせよ、そうでないにせよ、その土地に定められている容積率を無視した建物は、違法建築物となってしまいます。
工事中に発覚した場合は工事停止命令が、また完成後に発覚した場合は、使用禁止令や改善命令などの行政処分が下されます。
実際は、基本的人権(居住権など)との兼ね合いもあり、極端に厳しい処分が下されることはありません。とはいえ気持ちよく新居での生活を始めるためにも、規定を遵守して家づくりを行いたいところです。
容積率の見方
容積率は、それだけではただのパーセンテージです。
ここでは、容積率の大小によって、建てられる住宅の大きさがどのように変わるのかについて解説してみたいと思います。
容積率が大きいと…
容積率が大きい土地は、その分、大きな建物を建てられます。
もちろん建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合の上限)との兼ね合いもありますから、横に大きいのか縦に大きいのかはケースバイケースです。
とは言え、容積率以外の条件が同じ場合には、建てられる建物の大きさは容積率に比例することとなります。
容積率が小さいと…
反対に容積率が小さいと、建てられる建物の大きさは小さくなります。
建築基準法で定められている容積率の上限を見てみると、住居専用地域では200%まで、住居地域〜近隣商業地域では500%まで、商業地域では1300%までが上限となっています。
土地によって割り振られる容積率は違いますが、単純に上限だけを比べても、建物の小さなエリアは容積率も小さくなっていることがわかります。
余談ですが、日常生活でパーセンテージを用いる場合、100%以上の数字はあまり使わないですよね。
容積率が100%以上、というのは2階以上を前提にした数字です。
実際には住居地域の建ぺい率の上限は60%か80%ですから、少なくとも容積率が80%以上であれば、2階建ての住宅が建てられる、ということになります。
容積率を知る上で知っておきたい用語
容積率をきちんと理解するためには、それ以外の不動産用語についても知っておく必要があります。
以下に、最低限知っておきたい単語をピックアップして解説します。
用途地域
用途地域とは、雑多な建物が無秩序に乱立するのを防ぐために、所定の建築条件を定めたエリアのことです。
2019年現在、用途地域には以下の13種類が存在します。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
各用途地域ごとに、建てられる建物の種類や建ぺい率、容積率、高さ制限などが定められており、これを無視して建ててしまうと違法建築物となります。
エリアによって課される条件が違い、一般的な住宅であれば問題なく建てられる土地も少なからず存在します。
そのため土地購入時に情報共有されるかどうかはケースバイケースなのですが、後々になって予想外の制限につまづいてしまわないよう、売買契約を結ぶ際はしっかり業者さんに確認を取っておくことをおすすめします。
建ぺい率
建ぺい率とは、用途地域ごとに定められる、土地に対する建築面積の割合です。
建築面積は、文字通り建物を建てる面積のこと。建坪と呼ぶこともありますが、意味は同じです。
火災時の延焼を防いだり、生活音を抑えたり、一定の住環境を確保するために定められるもので、一般に住居が密集する地域(用途地域で言えば住居専用地域)ほど、低い数字に定められる傾向にあります。
ちなみに、2019年現在は、30・40・50・60・80%のいずれかの数字が上限として割り当てられることになっています。
注意したいのは、建てたい住宅の大きさと建ぺい率のミスマッチです。大きな住宅を建てようと広い土地を買ったのに、建ぺい率が30%だったら、満足のいく住宅は建てられないでしょう。
建ぺい率は、容積率と同じくらい重要な、建物の広さを決定づける建築条件と言えます。
延床面積
延床面積とは、建物の全フロアの床面積の合計のこと。前述の通り、容積率を算出する時に使われる大切な数字項目の1つです。
延床面積を考えるときにぜひ知っておきたいのが、実際は存在するのに、延床面積にはカウントされない部位です。
例えば建築物に以下のような部位が含まれている場合、該当の範囲は延床面積からは除外されて計算されます。
- ロフト・屋根裏
- 地下室
- ビルトインガレージ
- ポーチ
- バルコニー
- 屋外の階段(長さが周長の1/2以上)
- 吹き抜け
- 出窓
これらを上手に組み合わせることで、容積率の小さい土地であっても使い勝手のいい住宅を実現している事例は無数にあります。
延床面積の算出基準は、建築基準法の第52条に述べられていますので、興味がある人はチェックしてみると良いでしょう。
敷地面積
土地面積とも呼ばれる、土地全体の面積です。古い土地を購入した場合、登記簿に記載されている面積が実測値とズレている可能性も考えられます。
土地を購入する際は、土地家屋調査士等による正しい測定結果を確認されることをおすすめします。
土地購入時の容積率の活用方法をシミュレーション
続いて、容積率をチェックする時の具体的な流れをシミュレーションしてみましょう。
1、まず土地の坪数を知る
容積率は、それだけではただのパーセンテージです。容積率だけでは、その敷地の中にどの程度までの大きさの建物が建てられるのかわかりません。
まずは、基準となる土地の広さ(敷地面積)を把握しましょう。
今回は、参考までに40坪の土地を購入すると考えてみます。
2、建ぺい率をチェックする
続いて必要なのが建ぺい率です。
建ぺい率とは、敷地面積に対する、建物を建てられる面積(建築面積)の割合です。建物を真上から見た時の面積、と考えるとわかりやすいでしょう。
今回は、建ぺい率60%でシミュレーションしてみます。
土地の坪数は40坪ですから、今回購入する土地の建築面積は24坪(=40坪×0.6)以下と計算できます。
3、容積率をチェックする
続いて、容積率を見ていきます。容積率は、200%で考えてみましょう。
容積率は、敷地面積に対する建物の延床面積の割合です。土地の坪数が40坪ですから、容積率200%だと、延床面積の上限は80坪(=40坪×2)と計算できます。
これで、建築面積と延床面積の上限が算出できました。
4、建てたい家の延床面積と照らし合わせる
建築できる建物の大きさの上限を算出したら、自分たちが建てたい住宅とすり合わせていきます。
建築面積は24坪ですから、1フロアの面積は24坪以下に抑えなければなりません。
とはいえ、延床面積の上限は80坪です。建築面積の24坪をフルに使っても、3階分の住空間は確保することができます。
このように、建築面積、延床面積、それぞれの上限を踏まえつつ、定められた条件の中で要望を叶えられるかを模索していくわけです。
高さ制限など、他にも考慮しなければならない建築条件がありますので、実際にはもう少し複雑ですが、1つ1つ丁寧に計算していけば決して難しいことではない、ということはお分りいただけたのではないでしょうか。
容積率が小さい場合に検討したいポイント
容積率は、敷地面積に対する延床面積の割合です。もし容積率が小さいと、その分、住空間も狭くなってしまいます。
そういった場合に検討したいのが、延床面積に含まれない部位を効果的に活用することです。
以下に、限られた延床面積を効果的に使うポイントを紹介します。
吹き抜け
ご存知のように、吹き抜け部分には床がありません。
そのため、1階を広く取り、2階の一部を吹き抜けにすることで、延床面積を上手に使いつつ、開放的な住空間を実現することができます。
例えば延床面積が30坪の住宅だった場合、1階部分を13坪、2階部分を7坪、そして吹き抜け部分を3坪になるように割り振る、というようなイメージです。
余談ですが、各フロアの間取りを考えるときは、1階と2階のフロアが同じ形(総2階と言います)になるように調整すれば、外壁の角が少ない分、コストを抑えることができます。
外観デザインは多少のっぺりしますが、住空間が広く取れる上、節約したお金で家の中身を豪華にすることも可能。外観に強いこだわりがなければ、ぜひ検討されてみることをおすすめします。
地下室
ちょっとややこしいのですが、床が地盤面より下にあり、かつ床から地盤面までの高さがその部屋の高さの1/3以上のフロアで、天井が地盤面から1m以下にある部屋は、延床面積の1/3までは延床面積にカウントされません。
つまり地下室を設けることで、実質的に3割以上も延床面積が拡大されることになります。
相応のコストが掛かりますし、換気や避難経路等にも配慮しなければなりませんが、いざという時にシェルターになったり、プライベートシアターとして活用するなど、計画的に造ればより充実した住環境を実現できます。
もし予算に余裕があるなら、検討してみる価値はあるでしょう。
屋根裏部屋
屋根裏部屋も、地下室と同じく所定の条件をクリアする範囲であれば、延床面積に含まれません。
具体的には、天井までの高さが1.4m以下で、広さは階下の半分以下。取り外し可能な梯子で移動できる部屋が該当します。
天井高が1.4mですので生活するには利便性が低いですが、本来フロアに設置する予定だった収納の一部を屋根裏に割り振るなどすれば、効果的に住空間を増やすことができます。
また、昨今は空調や断熱材などの技術も進歩しているため、相応の設備を整えれば書斎や寝室としても快適に使うことができるでしょう。
まとめ
- 容積率とは、土地の広さに対する、建物の全フロアの床面積を足した数字の割合のこと。
- 建ぺい率(土地に対する建物を建てられる広さの割合)と併せて、その土地に建てられる建物の大きさを判断するために使う。
- 容積率は、その土地がどんな用途地域に属しているかによって違ってくる。
- 容積率について調べるには、「エリア名 容積率」「エリア名 用途地域」といったワードで検索すると、公的な情報が出てくるケースが多い。確実を期すなら役所を訪ねるのがベスト。
- 建物の部位には、延床面積から除外されるものがあり、うまく組み合わせれば小さい容積率でも十分な住空間を確保することができる。
専門用語が多くて混乱してしまうかもしれませんが、要は建物を上から見たときの面積と、全フロアの床面積の上限を定めて、その土地に建てられる建物の大きさを制限しているわけです。
容積率について混乱しそうな時は、土地の広さと、建物を上から見たときの面積の上限(=建ぺい率)、全フロアの床面積の上限(容積率)が三位一体の関係になっていることを、まず思い出してみてください。
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