注文住宅の予算を考える時、多くの人は、自分たちで用意できるお金を前提に資金計画を考えることでしょう。
それがもっとも堅実な方法であることは間違いありませんが、どういう住宅を建てるかによって、国や地方自治体が用意する補助金制度を利用できる可能性も考えられます。
場合によっては、高性能な住宅を割安で手に入れられるかもしれないわけです。
このページでは、注文住宅の予算を考える際に押さえておきたい、補助金制度について見ていきたいと思います。
注文住宅で利用できる補助金制度の種類
注文住宅で利用できる補助金には、以下のような種類があります。
名称 | 概要 |
---|---|
住まい給付金 | 消費増税による、住宅購入の負担軽減を目的とした給付金制度。 |
次世代住宅ポイント制度 | 省エネ性能や耐震性能に優れる住宅の普及を目指し、各種製品と交換できるポイントを交付する制度。 |
ZEH支援事業 | エネルギー的に自立した住宅の普及を目指し、所定の性能をクリアした住宅を建てる場合に補助金を給付する制度。 |
地域型住宅グリーン化事業 | 地場の住宅産業の強化を目指し、所定の性能や条件をクリアする住宅を施工する業者に対して、補助金を給付する制度。 |
サステナブル建築物等先導事業 | 省エネ性能に優れ、かつ寿命の長い建築物の普及を目指し、先進的な設備を導入する住宅を建てる場合に補助金を給付する制度。 |
エネファーム設置補助金 | 環境に優しい燃料電池の普及を目指し、エネファームの購入費用の一部を国が支援する補助金制度。 |
住まい給付金
画像引用元:すまい給付金
すまい給付金とは、平成26年4月〜令和3年12月までの期間で実施される、消費増税の負担を軽減するための補助金制度です。
注文住宅を建てる際、以下の条件に合致するようなら、必要書類を提出することで所定の金額が給付されます。
主な条件
- 不動産登記上の床面積が50平方メートル以上であること。
- 住宅ローンを利用している場合、竣工中に第三者機関の検査を受け、所定の品質が確認されていること。
- 住宅ローンを利用していない場合、施主の年齢が50歳以上であり、かつフラット35Sの基準を満たす住宅であること。
いくらもらえるか
給付額がいくらもらえるかは、申請した人の収入や、持ち分割合(申請者が住宅購入のために負担した金額の割合)によって違ってきます。
具体的には、課税証明書に記載された都道府県民税の所得割額に基づく基礎額に、持ち分割合を掛けて算出されます。
給付額 = 給付基礎額×持ち分割合
国土交通省が運営する公式サイトに給付金のシミュレーターが公開されていますので、具体的な金額を知りたい方はそちらを試してみると良いでしょう。
申請方法
申請ですが、注文住宅が建ち、そこに入居してから1年以内に手続きを行う必要があります。
手続きは、全国各地にあるすまい給付金事務局の窓口に出向くか、郵送するかして、申請書類を提出することで完了します。
受け取るタイミング
提出した書類に問題がなければ、給付金額の通知ハガキが送られてきます。通知ハガキには、金額のほか、振り込み予定日や口座の情報が記載されており、特に間違いがなければ、そのまま所定の日に振り込みが行われます。
振り込まれるタイミングは、申請を行ってから1.5〜2ヶ月ほどが目安とされています。
次世代住宅ポイント制度
画像引用元:次世代住宅ポイント制度
次世代住宅ポイント制度とは、省エネ性能や耐震性能などが決められた基準をクリアしている住宅を建てた人。または、そうした住宅性能を向上させるリフォームを行った人に対して、所定の商品と交換できるポイントを発行するという制度です。
消費増税の前後で、住宅を購入する人の間に負担の差が出ないように設けられた背景があり、注文住宅を建てる場合は2019年4月〜2020年3月までの間に請負契約・着工を行った場合に、申請をすることができます。
いくらもらえるか
円ではなくポイントであるため、具体的な金額は特定できません。
ただ、ポイント交換の対象商品は、以下のような製品から公募で選ばれることになっており、現在も着々とアイテムが追加されています。
- 省エネ・環境配慮に優れた商品
- 防災関連商品
- 健康関連商品
- 家事負担軽減に資する商品
- 子育て関連商品
- 地域振興に資する商品
また、ポイントの上限も1戸あたり35万ポイントとかなりボリュームがありますから、制度の条件に当てはまる注文住宅を建てられる方は申請しておいて損はないでしょう。
ちなみに付与されるポイントは、標準ポイント、優良ポイント、オプションポイント、といったカテゴリに分けられており、各カテゴリに設けられた条件を多くクリアしているほど、ポイントを稼ぐことができます
たとえば標準ポイントであれば、以下のいずれかに適合する住宅の場合に、30万ポイントが付与されます。
- エコ住宅 (断熱等級4又は一次エネ等級4を満たす住宅)
- 長持ち住宅 (劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等を満たす住宅)
- 耐震住宅 (耐震等級2を満たす住宅又は免震建築物)
- バリアフリー住宅(高齢者等配慮対策等級3を満たす住宅)
また、優良ポイントは、長期優良住宅や低炭素認定住宅、ZEHなど、より性能の高い住宅の場合に、1戸あたり5万ポイントが追加されます。
最後にオプションポイントですが、こちらはビルトイン食洗機や掃除しやすいレンジフードなど、設備の項目毎に付与されるポイント数が決められています。
詳しく知りたい方は、国土交通省が運営する次世代住宅ポイント制度の公式サイトを参照されてみると良いでしょう。
申請方法
住宅の形態や工事の内容によって申請方法は変わってきますが、注文住宅の場合は工事完了前か工事完了後、どちらかのタイミングでポイントの発行申請を行う必要があります。
手続きは郵送か窓口に直接出向いて必要書類を提出することで行いますが、ポイントの発行申請は2019年10月からの受け付けとなっており、申請の書式等もまだ準備中です。申請に興味がある方は、定期的に次世代住宅ポイントのホームページを覗いて、情報が更新されていないか確認されてみることをおすすめします。
受け取るタイミング
ポイントが発行されてから商品交換ができる期間は、2019年の10月1日〜2020年の6月30日と予定されています。
1度に全てのポイントを使い切らなければならないというルールはありませんから、期限を気にしつつ、気に入った商品を見つけたタイミングで適宜交換申請を行うと良いでしょう。
ZEH支援事業
画像引用元:SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|事業トップ(【経産省ZEH】平成31年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業)
ZEH(ゼッチ)は、ネットゼロ・エネルギー・ハウスの略で、消費する量と発電する量がほぼ等しく、他から得るエネルギーがゼロ、ないしゼロに近い状態にある住宅のことです。
具体的には、高気密・高断熱、エネルギー効率の高い空調などで省エネを実現し、太陽光発電などでクリーンエネルギーを自家発電して、エネルギー的に自立した住宅を目指します。
国は、ZEHを次世代の標準的な住宅にしようと普及を推進しており、ZEH支援事業も、そうした活動の一環として設けられました。
ZEH支援事業は、環境省・国土交通省・経済産業省が連携して運営を行う事業で、ZEHの定義に当てはまる住宅を購入、新築、改修した人を対象に、補助金の給付を行っています。
いくらもらえるか
ZEH支援事業で受け取ることができる補助金は、1戸あたり70万円です。
ZEHを実現するためには相応のコストが掛かりますが、補助金に加え、将来的に電気代・ガス代を大幅に節約できることを考えれば、ZEHを念頭に注文住宅を検討するのはメリットの大きい選択と言えるでしょう。
ちなみに、ZEHの上にはもう2段階支援事業があり、それぞれZEH+実証事業、ZEH+R強化事業と名付けられています。
ZEH+は、ZEHからさらに再生可能エネルギーの自家消費拡大を目指した住宅で、こちらの補助金額は1戸あたり115万円。
ZEH+Rは、停電に備えた蓄電設備や、太陽光による温水システムを完備した住宅で、補助金額は1戸あたり125万円+設備購入の補助金(上限60万円)となっています。
申請方法
ZEH支援事業の補助金を受け取るには、ZEHの条件を満たした住宅を、環境共創イニシアチブに登録されたZEHビルダーで建てる必要があります。その上で公募に応募し、採択されれば補助金を受け取ることができます。
環境共創イニシアチブは、経済産業省の外郭団体で、ZEH事業の管理を行う社団法人です。ZEHビルダーに該当するハウスメーカー、工務店は、同法人の公式サイトで検索することができます。
また、補助金を受け取るためには、申請書や実施計画書などの必要書類の提出する必要もあります。とはいえこちらについては、基本的にはZEHビルダーが代理で行うことになっており、施主側は求めに応じてサインや捺印をするだけでOKです。
受け取るタイミング
補助金を受け取るタイミングについては、申請する時期にもよりますが概ね引き渡しから半年前後で入金されることが多いようです。
建築から間が空いてしまいますので、家づくりの予算として活用するのは難しいでしょう。
地域型住宅グリーン化事業
画像引用元:補助事業の概要
地域型グリーン化事業は、各地域の設計事務所、中小工務店等の連携を促し、省エネ性能や耐久性能に優れる木造住宅の建築体制の効率化、ひいては環境に対する負担の軽減を目的とした支援事業です。
地域型グリーン化事業のグループに所属する設計事務所や工務店に依頼し、補助対象条件をクリアする住宅を建てた場合に補助金を受け取ることができます。
いくらもらえるか
受け取ることができる具体的な金額は、住宅の種類や、地域材の使用の有無、業者の施工経験などによって違ってきます。
補助対象となる木造住宅・建築物の種類と上限額
補助対象となる住宅の種類 | 上限額 |
---|---|
長寿命型(長期優良住宅:木造、新築) | 110万円 |
高度省エネ型(認定低炭素住宅及び性能向上計画認定住宅:木造、新築) | 110万円 |
高度省エネ型(ゼロ・エネルギー住宅:木造、新築および改修) | 140万円 |
省エネ改修型(省エネ基準(既存)を満たす住宅:木造、改修) | 50万円 |
優良建築物型(認定低炭素建築物等一定の良質な建築物:木造、新築) | 1万円/平方メートル |
長寿命型、高度省エネ型については、柱・梁・桁・土台の過半に地域材を使用する場合に20万円、キッチン、浴室、トイレ又は玄関のうちいずれか2つ以上を住宅内に複数箇所設置する場合に30万円を上限に、予算の範囲内で補助金額が加算されます。
ちなみに加算される金額は、施工事業者の平成27~30年度の地域型住宅グリーン化事業における施工経験によって、異なります。
地域型住宅グリーン化事業とは?補助金交付の条件などをわかりやすく解説
申請方法
申請は業者が行ってくれる上、補助金も業者に対して支払われます。そのため、施主側の負担はほとんどありません。
注文住宅を建てる際に地域型グリーン化事業のグループに属する業者を選び、業者と相談しながら、補助金を含めて最大限コストパフォーマンスが見込める住宅を設計していけば良いわけです。
サステナブル建築物等先導事業
画像引用元:住宅:サステナブル建築物等先導事業 - 国土交通省
サステナブル建築とは、長期間持続的に存在できる、寿命の長い建築物のこと。そしてサステナブル建築物等先導事業とは、そうした建築物の普及を左右する先導的な設計・技術を導入して住宅を建てる場合に、補助金を給付するという制度です。
サステナブル建築物等先導事業にはいくつかの種類があり、2019年現在は、省CO2先導型、木造先導型、気候風土適応型、次世代住宅型といった複数のプロジェクトが立ち上げられています。
サステナブル建築物等先導事業については、以下の記事でより詳しく解説しています。
いくらもらえるか
プロジェクトの種類や建築物の性能などによって違いますが、500万円が上限(ただし評価委員会により認可された事業は上限1000万円)とされています。
申請方法
申請は業者が行うため、施主の側で必要な手続きはほとんどありません。
依頼する業者が望む事業の認定を受けていれば、その業者に依頼して所定の条件をクリアする注文住宅を建てることで、業者に対して補助金の給付がなされます。
業者が受け取った補助金相当額を施主に還元することで、間接的に補助金を受け取るわけです。
受け取るタイミング
プロジェクトに採択されている業者の事業がすべて完了した段階で申請がなされ、そこから書類審査(場合によっては現場検査)などが行われ、業者に対して一括で補助金が支払われます。
自身の注文住宅が完成したからといって、すぐに補助金を受け取れるわけではない、ということは知っておくと良いでしょう。
エネファーム設置補助金
画像引用元:補助金制度について | 燃料電池普及促進協会(FCA)
エネファーム設置補助金は、環境への影響が小さい燃料電池システム(エネファーム)を普及させるために、同システムの購入者に対して、費用の一部を国が支援するという制度です。
補助金の交付対象となるのは、燃料電池普及促進委員会(FCA=Fuel Cell Association)が指定する新品のエネファームであり、2019年8月現在は以下の製造業者、ブランド事業者が手がける製品がラインナップされています。
- アイシン精機
- 大阪ガス
- 東京ガス
- 東邦ガス
- パナソニック アプライアンス社
いくらもらえるか
エネファームには、固体酸化物形と固体高分子形の2タイプの機種があり、どちらを導入するかによって補助金の額が違ってきます。
固体酸化物形のエネファームは、機器の価格と工事費の合計が80万円以下の場合は一律8万円。合計額が80万円を上回っており、かつ96万円を下回っている場合は4万円と設定されています。
固体高分子形の場合は、こうした定額補助はありません。
また、両タイプとも、燃料の種類や設置場所、システム使用などによって、追加の補助額が定められており、ケースバイケースで給付される金額も変わってきます。
申請方法
工事の着工前に、FCAに対して補助金の申し込みや交付申請を行い、書類審査で適正と判断されれば、補助金の交付決定通知書が送られてきます。
その後、設置工事を行い、工事が完了したら再びFCAに補助事業完了報告書を提出。書類審査、現地調査等を経て適切と判断されれば、補助金が支払われることになります。
受け取るタイミング
状況にもよりますが、申請から3ヶ月以内には、振り込みが完了するケースが多いようです。
注文住宅で利用できる減税が見込める税金の種類
土地購入費用も建築費用も、1000万円単位の大きなお金が動きます。パーセンテージは小さいとはいえ、母数が大きい分、支払う税金も可能な限り押さえておきたいところ。
以下に、注文住宅を建てる際に減税が見込める税金をまとめてみます。
所得税・住民税
注文住宅を建てる際に住宅ローンを利用した場合、借り入れから10年間は、年末の時点でのローン残債の1%が、翌年の所得税(一部住民税)から控除されます。
また、費用に適用される消費税が10%で、2019年10月1日〜2010年12月31日までに住み始めた場合は、控除期間は13年間に延長されます。
ちなみに申請は、入居した年の確定申告時に、管轄の税務署に必要書類を提出することで行います。
贈与税
贈与税は、その年度に、他者から110万円以上の財産を贈与された場合に課される税金。
贈与する額が大きければ多いほど税率も増え、1000万円以上で45%。1500万円以上で50%と、控除額を差し引いても、その半分近くが徴収されてしまいます。
ただ、この贈与税は、住宅取得を目的に、直系の存続(父母や祖父母)から贈与された財産については、一定額までが非課税となる可能性が。
所得や新築する住宅の床面積等、クリアしなければならない条件はありますが、節税メリットは小さくありません。将来的に発生するであろう相続問題に対する解決策としても、ぜひ検討しておきたい手段と言えるでしょう。
登録免許税
土地を購入したり、住宅を建築したりすると、その所有権を登記簿に記す必要があります。また、住宅ローンを利用する場合は、抵当権の設定登記も行わなければなりません。
登録免許税は、こうした登記手続きに掛かる税金です。ただ、住宅に関連する登記手続きの場合は、以下のような特例措置が取られており、その他の登記手続きより税負担が軽減されています。
登記の種類 | 本則 | 特例 |
---|---|---|
所有権の保存登記 | 0.4% | 0.15% |
所有権の移転登記 | 2.0% | 0.3% |
抵当権の設定登記 | 0.4% | 0.1% |
不動産取得税
不動産取得税とは、その名の通り不動産を取得した際に1度だけ掛かる税金です。一般的な税率は4%ですが、住宅の場合は3%に軽減される特例措置があります。
その他特例措置
世界的な環境意識の高まりを背景に、国は省エネ性能に優れ、長く住める住宅の普及を推進しています。その一環として、長期優良住宅や低炭素住宅を建てる人を対象とした、税制優遇措置が用意されています。
認定長期優良住宅
他の不動産と比べて、住宅は税制面で優遇されていますが、長期優良住宅の場合はそうでない住宅に比べてさらに大きな節税が見込めます。
例えば住宅ローン控除。普通の住宅が借り入れ限度額の4000万円までが控除対象であるのに対し、長期優良住宅の場合は5000万円まで限度額が引き上げられます。
また、不動産取得税についても、課税標準から差し引かれる控除金額が100万円多く(1200万円が1300万円に)なっています。
ほか、登録免許税は0.05%減、固定資産税の減額期間は40%延長されるなど、税制メリットは小さくありません。
認定低炭素住宅
低炭素住宅も、長期優良住宅と同じように住宅ローンの控除額の上限が5000万円まで拡大されています。
また、投資減税型の特別控除というものが利用でき、性能強化に掛かった費用の10%相当(上限が650万円)が、所得税から控除されます。
まとめ
- 国が用意する補助金制度は複数あり、併用できるものも多い。
- 住宅性能を給付の条件とする補助金制度が多いため、設計段階からしっかり検討しておくことが大切。
- 依頼する業者によって補助金を受け取れたり受け取れなかったりするため、事前のリサーチが不可欠。
- 手続きは業者が代行してくれるものも多いため、内容問わずざっくばらんに相談できるパートナーを選ぶことが大切と言える。
住宅に関連する補助金は、一見すると複雑に思えるかもしれません。要件も細かく定められており、1つの制度を読み解くのも一苦労です。
とはいえ、場合によっては100万円単位のお金を節約できる可能性も。
補助金に関する相談窓口も無数にありますから、そうした業者の力も活用しながら、コストパフォーマンスの高い資金計画を考えてみてください。
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