ハウスメーカーや工務店などの資料を見ると、住宅工法の説明を目にすることがあります。技術的なことはよくわからないし気にしてないという方は要注意。工法の違いで家づくりは全く変わるからです。
どれが良い・悪いということはないですが、工法が異なれば性能やデザイン、建物の規模に大きく影響しますし、それぞれメリット・デメリットがあります。そうした違いを正しく理解するために代表的な工法についてまとめました。
この記事がおすすめできる人
- 家の工法の種類について知りたい人
- 工法のメリット・デメリットが知りたい人
- 家の工法で悩んでいる人
- これから注文住宅を建てようと考えている人
なお以下の記事でも「注文住宅」について詳しく解説しています。ぜひ、本記事と合わせてご覧ください!
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目次
木造(W造)
日本では古くから木造建築が主流で、非木造化が進む今でも木造住宅が占める割合は60%以上あると言われます。ただ同じ木造でも工法にはいくつかの種類がありますので、ここではそれぞれの違いやメリット・デメリットを解説します。
木造軸組(在来工法)
木造軸組は日本の伝統的な住宅工法で、在来工法とも呼ばれます。柱や梁といった軸材を渡して骨組みを構成し、筋交いと呼ばれる斜めの材で補強するのが特徴です。近年では連結部分に金具を利用してさらに強度を高めています。
メリット
木造軸組工法の最大のメリットは設計の自由度の高さです。建物の四隅にある柱など構造上で重要な箇所を残しておけば間取りを変更したり、増築するのも容易にできます。また狭小・変形地にも対応しやすい点も特徴です。
さらに他の工法と比べると建築コストが安くなるというのもメリット。伝統的な工法なので対応できる施工業者が多いですし部材の調達もしやすく、木材自体の断熱性能が高いため余計な材料費や手間がかかりません。
デメリット
近年は工場での木材プレカットが進んでいますが、従来の現場で組み立てていく方式では、仕上がりが工務店や大工職人の技術や熟練度に左右されやすい性質があります。またシステム化された工法に比べ工期が長くなりがちです。
その他に木材の弱さが耐久性に影響するのもデメリットの一つ。湿度が高く結露が起きやすい環境下では腐食したりカビが発生するリスクがありますし、シロアリが発生することも考えられるので、定期点検をして早めの対処が必要になります。
木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)
北米から日本に輸入された工法で耐震性や耐火性に優れ、その生産性の高さから近年シェアを伸ばしています。床、天井、屋根の面全体で躯体が構成されます。木造軸組のような柱と梁ではなく、壁で支える構造なのが特徴です。
メリット
面で支えるモノコック構造による、優れた耐震性能が大きなメリットで、従来工法よりも1.5~2倍の耐力があるとされています。がっちりした箱型なので気密性・断熱性も高く、枠組材が空気の流れを遮断するので耐火性もあります。
またシンプルな構造体にするために、使用部材や建築方法が規格化されているため、大工職人の技量に関係なく安定品質の家ができる点も注目できます。工場でベース部分を生産して現場で組み立てる、ハウスメーカーが取扱いやすい工法です。
デメリット
木造枠組壁工法と言うように、壁で建物を支える構造は、頑丈さのメリットとは反対に、間取りや増改築の自由度を下げることにもつながっています。多くの壁が必要になる分、角に開口部を設けられないなどの制約が出るのがデメリットです。
徐々に浸透しつつある工法ですが、日本ではまだ歴史が浅いため、施工できる工務店やハウスメーカーは限られてしまいます。特に中小規模の工務店では対応していないことも多く、大規模なリフォームが発生した場合は多くの費用がかかります。
木造ラーメン工法
ラーメン工法とは、長方形に組まれた鉄骨を溶接などで一体化させ、枠(ラーメン)を形成する工法です。このラーメン工法を、接合部に鋼板やラグスクリューボルトを用いることで木造でも実現したのが、木造ラーメン工法です。
メリット
枠部分をしっかり組むことで壁や柱を少なくすることができるため、木造でも大空間を作ることができたり、3階建てにもしやすいメリットがあります。これまで鉄筋造りでしかできなかったことが、木造住宅で可能になるということです。
また基本となる柱は残りますが、大きな窓が設置できたり、室内の間取りの自由度が高いのも特徴です。構造を支えるための壁は必要ないため、将来大きなリフォームが必要になった場合にも、比較的容易に対応することができます。
デメリット
木造ラーメン工法では、柱や梁の接合部に鋼板、鋼棒などを用いますが、地震などで横揺れが生じた場合に接合部に力が集中してしまうので、一定以上の力が加わると損傷してしまう可能性があることがデメリットです。
また、木造軸組やツーバイフォー工法よりも浸透してないため、どんな施工会社でも対応できるわけではありません。建築コストも、鉄筋コンクリート造りよりは安くなっても、一般的な木造住宅としては価格は高めになってしまいます。
木造軸組パネル工法
木造軸組工法と木造枠組壁工法(ツーバイフォー)を組み合わせて、両方の長所を生かした工法で、ハイブリッド工法とも呼ばれます。木造軸組と同じように柱と梁で躯体を組み上げていき、外側に耐力壁としてパネルを張る和洋折衷の工法です。
メリット
木造軸組の柱や梁の構造だけだと隙間ができて断熱性に弱い部分がありますが、上からパネルを張って外気を遮断することができるので、断熱性が高くなります。それによりエアコンの使用量が抑えられ、光熱費負担の軽減につながる点もメリット。
筋交いによる補強で木造軸組だけでも一定の強度を保つことができますが、パネルを張って面で支えることで、筋交いに力が集中しすぎることが無くなります。間取りの自由度を維持しながら、ツーバイフォーの耐震性も手に入ることになります。
デメリット
木造軸組パネル工法は、施工会社によっては独自の工法名を付けている場合があります。それだけカスタマイズ性が高いのですが、ツーバイフォーのように工法が規格化されていないため、施工会社ごと品質や価格がバラバラになりがちです。
木造枠組壁工法や木造枠組壁工法(ツーバイフォー)は名称がわかりやすいですが、ハウスメーカー側で様々な建築技術を組み合わせてオリジナル名が付いていると、木造軸組パネル工法かどうか判断しにくいというのも難点です。
鉄骨(S造)
鉄骨造(S造)とは柱や梁などの骨組み部分に鉄骨を用いる構造のことで、S造やS構造と言われることもあります。鋼材の厚みによって軽量鉄骨と重量鉄骨に分けられ、以下の紹介する鉄骨軸組工法と鉄骨ユニット工法が代表的な工法です。
鉄骨軸組工法
木造軸組工法と同じように柱と梁、筋交いを骨組みとした構造を持ちブレース構造と呼ばれることもあります。一般的に軽量鉄骨が使用され、一般住宅だけでなく賃貸アパートの建築などにも採用されることがある工法です。
メリット
鉄骨軸組工法の最大のメリットは、品質にばらつきがなく安定している点です。木材は水分量や部位によりどうしても品質差が避けられませんが、鉄骨は金属なので、品質は一定。乾燥させたり上下向きによる違いなどを意識しなくても大丈夫です。
開口部を作りやすいという点では木造軸組工法と同じですが、木造では大きな弱点となるシロアリ被害の可能性が低く、耐久性の面でも安定していると言えます。軽量鉄骨なら地盤や基礎への影響が少なく、木造並みの基礎で対応できます。
デメリット
鉄骨造りは頑丈であるがために、木造に比べると加工に手間がかかり、建築費用が高くなることがデメリットです。また加工のしずらさは、間取りの自由度の無さにもつながるため、木造軸組工法のような柔軟性はありません。
また鉄は熱伝導率が木材よりも高いため断熱性能は低くなります。また金属なので、適切に防錆処理をしないとサビが付きます。住宅建築の場合は断熱や防錆は必ず行われますが、そのような点でも建築費の増加につながります。
鉄骨ユニット工法(ラーメン構造)
工場で生産された鉄骨ユニットを現場まで運んで組み立てていく工法です。柱と梁を剛接合するラーメン構造になっていることが一般的で、一戸建て住宅だけでなく中高層のビルや集合住宅でもよく採用されている工法です。
メリット
工場である程度建築工程を進めたものを現場に持っていくため、ユニットを組み立てるだけで作業が終了し、職人の技量によって品質が変わることがありません。安定した施工が可能で、手間がかからず工期が短くて済みます。
また鉄骨ユニットは強靭なラーメン構造により、耐久性が高く耐震性にも優れていることもメリットとして考えられます。頑丈ながらも壁で支える構造ではないため、広い空間を作ったり大きな窓を設置しやすい特徴を持ちます。
デメリット
広い空間を作りやすいのとは反対に、ユニットの柱や梁はどうしても残るため、間取りに自由度という点では制限を受けてしまうのがデメリットです。変わった間取りを検討している場合には実現できない可能性があります。
ユニット工法全体に言えることですが、旗竿地や狭い道路に面していて、ユニットが運び込めないような立地では建築できないことがあります。また、リフォームしようとすると大掛かりになり、コスト高になってしまうというのもデメリットです。
重量鉄骨と軽量鉄骨の違い
重量、軽量とありますが、実際は鉄骨の厚さによって分けられていて、6mm未満であれば軽量鉄骨、6mm以上であれば重量鉄骨と呼びます。建築の際はアパートや小規模店舗などでは軽量鉄骨、大型マンションやビルは重量鉄骨がよく使われます。
法定耐用年数は軽量鉄骨は19~27年で、重量鉄骨の方がやや長く34年です。一般的な建築物で鉄骨造というと重量鉄骨を指しますが、ハウスメーカーの鉄骨造りの家は、ユニット工法の軽量鉄骨を指すことが多いようです。
耐震性については単純に鉄骨の厚みで考えれば重量鉄骨の方が高そうですが、軽量鉄骨も筋交いにより地震への耐力はつきます。建築する際の工法や他の建材との組み合わせなどによりどちらも地震に強い建築物を造ることは可能です。
鉄筋コンクリート造(RC工法)
柱や梁など住宅の主要な構造部にコンクリートの芯として鉄筋を入れたもので、RC(Reinforced Concrete)造とも呼ばれます。高い強度を持つため、ビルやマンションなどの中高層の建物にも採用されています。
メリット
圧縮に強いコンクリートと引張力に強い鉄筋が組み合わさることで、高耐久の構造を実現できるのが最大のメリットです。面で力を受け止めるモノコック構造により、地震の力を分散することができるため、耐震性にも優れています。
また、コンクリートは熱に強く耐火構造になっているため、住宅に防火設備を設ければ耐火建築物になります。その他にも隙間がないために気密性や遮音性も高く、木造の10倍の音を遮断することが可能と言われています。
デメリット
木造に比べると、鉄筋コンクリート造の方が建築コストがかかります。ディベロッパーがマンションを建築する際はそれほど問題になりませんが、一戸建ての注文住宅では個人としてかなりの負担になることが考えられます。
また気密性が高いことはメリットでもありますが、結露やカビ、シミなどが発生しやすくなるという欠点も併せ持ちます。住宅の場合、設計時に換気システムをよく検討しておかないと、後からメンテナンスが大変になる可能性があります。
SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート構造)
SRCのSとはSteelのことで、コンクリートの中に鉄筋以外に支柱として鉄骨を入れることで、鉄筋コンクリートよりもさらにしなやかさと強度を高めたものです。高層の大規模マンションなどの建築に採用されています。
メリット
鉄筋と鉄骨の両方を使用するため非常に強度を高めることができ、その結果として柱や梁の断面を細くすることが可能になるため、室内の圧迫感も軽減されます。変形に強い構造になるため、耐震性についても大変高くなります。
また、コンクリートで鉄骨を囲むため、鉄骨のみの建築物よりサビに強く、コンクリートの耐熱性により耐火性能も上がります。建物全体の重量が抑えられるため、超高層のマンションに求められる強度や、しなやかさを満たすことが可能です。
デメリット
SRC造は建物の構造的には非常に優れていますが、鉄骨コンクリート造よりも工程が複雑になるため、工事が長期化することが避けられず、その結果として建築コストもさらに高くなってしまうのが最大のデメリットです。
コスト高になる割には、遮音性に関しては鉄筋コンクリート造とそれほど変わりはありません。近年は建築技術の進歩により、鉄筋コンクリート造でも優れた耐震性を実現できるようになっているため、SRC造の強度の高さというメリットがやや薄れています。
プレハブ工法
プレハブ工法とは、あらかじめ作っておいた部材を、現場で組み合わせるタイプの工法全般を指す言葉です。以下に、主なプレハブ工法の種類をまとめてみます。
木質
床や壁などの主要構造部の木質パネルを、あらかじめ工場で生産して現場で組み立てる建築工法のことです。ツーバイフォー工法と同様の壁式工法に属しますが、木材で組んだ枠に断熱材や地材まで充填するため、部材や施工の合理化が可能になります。
パネルや柱・梁などの部材には、あらかじめ防腐や白蟻防止の処理も行われ、生産されたパネルは工場で厳しいチェックを受けた後に、現場まで運んで工事が進められます。工期が短く、しかも品質の高い住宅を建築できるのが大きな特徴の一つと言えます。
鉄骨
工場で生産された軽量鉄骨を骨組みの材料としているプレハブ工法で、ハウスメーカーが提供するプレハブ住宅の主流となっています。建築現場において難しい作業の一つである、鉄骨を溶接することが必要がなく、構造強度が一定になるというメリットがあります。
鉄骨系プレハブ工法には軸組方式やパネル方式などいくつかのタイプがありますが、軸組工法が主流となっており、木造軸組工法と同様にブレースと呼ばれる筋交いを入れて強度を高めたり、工場生産の際には念入りに防錆対策を施しているため、鉄骨の弱点を抑えた家づくりが可能です。
ユニット
鉄骨の柱と梁で組み立てた箱型のユニットをあらかじめ工場で生産して、現場までトラックで運び、クレーンで持ち上げて積み木のように組み上げていく工法です。ユニットは鉄骨だけでなく、木質系のものもあり、キッチンやユニットバスなどの設備機器も取り付け済です。
家づくりの80%が工場で終わっているため、工期が短くて済み、最短で2ヶ月の完成も可能です。現場での人件費削減や工場生産方式によりコストを圧縮でき、施主の負担も軽減されます。
また、耐久性、耐火性などが工場の生産段階で審査されるため、品質が安定しています。ただユニットを運び込める道幅や現場がないと施工は難しくなります。
コンクリ
あらかじめ工場で生産された鉄筋コンクリートパネルを現場で組み立てる工法で、プレキャストコンクリート工法とも呼ばれています。現場でコンクリートを流し込む方式と違って天候の影響を受けることがなく、安定した品質の施工が可能なことがメリットです。
コンクリートが持つ耐久性や耐震性、耐火性をそのまま生かすことができ、施工の効率化により工期が短く一般的なコンクリート住宅よりも建築コストも削減できます。
その一方で、コンクリートパネルが規格化されているため、複雑な形のデザインにするなどの自由度は低くなってしまいます。
まとめ
以上のように注文住宅の工法はまず木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなど建材の違いで大きく分けることができます。さらにそれぞれの特性を生かした工法に枝分かれしており、メリット・デメリットも違います。
こうした工法の種類や特徴を知らずに住宅会社と相談すると、相手が勧めるままになり、本当に欲しいと思っていたマイホームから遠ざかってしまう危険性もあります。したがって、工法についての知識をつけておくことは非常に重要なのです。
どの工法を採用すべきかは、家づくりにおいて何を優先するかによって変わります。初期段階で迷わなくするためには、ここで紹介した工法の違いを理解した上で事前に家族で話し合っておくことが大切です。
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