土地や建物を購入するとき、避けて通れないのが税金です。
身近な品物を購入するときは違った、難しい名前の税金がいくつもあり、税額について考えるのを放棄したくなってしまいますよね。
ここでは、そんなややこしい税金のうちの1つ。都市計画税について、なるべくわかりやすさを心掛けてまとめてみました。
また、不動産に関係する、都市計画税以外の主だった税金についても簡単に紹介しています。税金周りの知識について取っ掛かりを求めている方は、ぜひ参考に目を通してみてください。
目次
そもそも都市計画税とは
都市計画税とは、各市町村が、市街化区域内に存在する土地や建物などの不動産に対して任意で課税できる地方税です。
固定資産税とセットで納付するものですが、不動産を持っているからと言って、全ての人に課される訳ではない、という点で違いがあります。
どういう人が払う?
固定資産税も都市計画税も、毎年1月1日時点で不動産を所有している場合に課される税金です。所有している、というのは、固定資産課税台帳に登録されている、という意味。
たとえ年内に手放す予定の土地であっても、固定資産税や都市計画税は、買主と日割りで折半して支払うことが一般的です
ただ、都市計画税が課されるのは、市街化区域内に不動産を所有している人のみ。
また、課税を行うかどうかについても、各市町村が任意で決定しており、都市計画区域を区分しているからと言って必ずしも課税される訳ではないという特徴があります。
都市計画区域の種類
都市計画区域とはどういうものかを簡単に説明します。
そもそも都市計画とは、その名の通り都市を計画的に作るための青写真のこと。様々な目的の不動産が無秩序に乱立すると、生活のしづらい街になってしまいます。
そこで、人・モノ、そして地形の動きを将来まで見据えた上で区域分けを行い、一定の目的に沿って各エリアを整備していこうという都市計画の考えが生まれた訳です。
都市計画区域とは、そうした都市計画で区分された各エリアのことを言い、大きく市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域、という3つの種類に分けられます。
市街化区域
市街化区域は、すでに市街となっている区域や、近い将来に市街化をする予定の区域を指します。
市街化区域では、都市計画法に基づいて用途地域というものを定めており、用途地域の何に該当するかによって、その土地に建てられる建築物の用途や容積率、建ぺい率などの、建築基準法による制限が決まります。
前述の通り、都市計画税が課されるのは、基本的にはこの市街化区域に存在する土地、建物です。
市街化調整区域
市街化区域が、住民のために開発・発展を促す地域であるのに対し、市街化調整区域は、市街化を抑制する地域に分類されます。
基本的に、新しい建物を建てることはなく、また増築なども積極的には行われません。すでに建っている建物は除き、農林業、水産業のために使われる土地(多くは田んぼや畑)として扱われます。
市街化区域に比べて、土地活用のハードルが高く、また決して生活の利便性が高いエリアではないため、土地の価格や固定資産税が低いという特徴があります。
また、都市計画の範疇からは外れますので、都市計画税は非課税です。
非線引き区域
非線引き区域とは、先述の市街化区域、市街化調整区域の線引きがされていない区域のことです。
急激に開発の進む恐れのある都市部では、利便性を担保しつつ成長を促すために、ある程度の制限が必要です。計画的に市街化を進めながら、保護するべき地域は保護しなければなりません。
しかし人口が少なく、市街と田園が混然一体となっているような地域では、そうした区域分けを行うことは困難。こうしたことから、市街化区域にも市街化調整区域にも属さないエリアを、非線引き区域と扱っている訳です。
非線引き区域は、土地の価格が安く、建てられる建築物の制限も緩いのですが、市町村によっては都市計画税が課されることもあります。
いくら支払う?
都市計画税は、「課税標準額×各市町村が決める税率」で決まります。課税標準額は、概ねその不動産の評価額であり、各市町村が決める税率は、0.3%が上限となっています。
例えば2000万円の土地に2000万円の建物が建っているような場合、それぞれの税額は2000万円×0.3%=6万円となり、合計で12万円の支払いが発生する訳です。
ちなみに、税率の上限は0.3%ですが、必ずしもこの上限で課税している市町村ばかりではありません。
正確な数値を算出されたい場合は、地域の役所に問い合わせてみるか、ウェブで「地域名 都市計画税 税率」といったキーワードを検索されてみることをおすすめします。
何に使われる?
都市計画税は、文字どおりその地域の計画的な発展のために使われます。例えば道路や駐車場、公園等の整備や、各種ライフラインのメンテナンス、再開発事業などです。
とはいえ、使い道は幅広く、それを各自治体が自由に決定できるため、受益者負担の原則から外れる課税だという批判も少なくありません。
いつ支払う?
税額は1月1日時点の不動産の評価額で決まり、6月頃に4期分の納付書が送られてきて、以降3ヶ月ごとに年4回支払うというのが一般的です。
もちろん、他の税金と同じように、一括か分納を選ぶことができます。
払わないとどうなる?
納税期限は、納付書ごとに1ヶ月後と定められています。もし期限までに納付しないでいると、延滞期間に応じて延滞金が課せられます。
一定期間以上滞納を続けると督促状が送付され、督促状を無視し続けると、銀行口座をはじめとする手持ちの資産が差し押さえられることになります。
もし支払いができない何らかの事情があるなら、早めに役所の窓口に相談されることをおすすめします。
押さえておきたい計算方法
都市計画税の税額は、以下の数式で算出されます。
- 固定資産税評価額×各自治体が定める税率(上限0.3%)
都市計画税の税率は制限税率となっており、標準がありません。各市町村は、制限税率である0.3%以内で、任意に税率を設定することができます。
式を作る項目
上記の通り、都市計画税の式を作る項目は固定資産税評価額と制限税率の2つです。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、総務大臣によって定められた固定資産評価基準(土地や建物をどう評価するかという基準)によって決定されます。
土地と建物で分かれており、土地の場合は、売買実例価額を元に求められます。具体的には、不動産鑑定士が評価した該当エリアの価格の、約7割となっています。
制限税率
地方税の課税額は、標準税率という、基準となる税率に沿って決定されるのが一般的です。
これに対し、各市町村が、それぞれの理由で標準税率を上回って課税する場合の上限として設けられているのが、制限税率です。
ただ都市計画税の場合、標準税率はなく、制限税率のみが定められています。都市計画税の制限税率は0.3%となっており、各自治体は、0.3%以下の税率をそれぞれ独自に設定して課税を行っています。
住宅用地には軽減措置も
都市計画税を計算する上で注意したいのが、土地が住宅用地の場合は、軽減措置があるという点です。
具体的には、200平方メートル以下の小規模住宅地と、それ以外の住宅地で、固定資産税評価額が以下のように割り引かれます。
小規模住宅地 | 200平方メートル以下の住宅用地の場合、固定資産税評価額が1/3となる。 |
---|---|
小規模住宅地 | 200平方メートル以上の住宅用地の場合、200平方メートル分は固定資産税評価額が1/3、それ以上は2/3となる。 |
これらの軽減措置は、特に手続きを取らなくとも、地方自治体の方で計算してもらえます。
そのため改めて意識する必要はないのですが、稀に担当者が誤ることもあるため、知識として持っておくに越したことはないでしょう。
都市計画税が高い物件の特徴
都市計画税は、ケースバイケースで金額が変わってきます。続いては、どういった要因で都市計画税が高くなるのか、その理由を解説します。
都市計画税が高くなる理由
都市計画税の計算式は、固定資産税の評価額に、地方自治体が定めた税率(上限0.3%)を乗じたものです。
割合が千分率であることから、各市町村が課す税率の差で、そこまで大きく税額に違いが出ないことが伺えます。税額に大きく影響するのは、固定資産税の評価額であると言えるでしょう。
固定資産税の評価額(不動産の資産価値)が高くなる理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 土地の価格が高い。
- 土地の面積が大きい。
- 建物の延床面積が大きい。
- 資産価値の高い建築材料や構造、設備などを採用している。
どれも魅力的な物件の条件ですよね。
しかし、せっかく予算内で理想の住宅を建てたのに、入居後に毎年数10万円を税金で取られてしまう、というのはあまり歓迎できません。
新居に引っ越した後に後悔しないよう、固定資産税や都市計画税がどの程度のものなのか、事前に下調べして検討をつけておくことをおすすめします。
番外・異常に高い時は自分でも計算してみよう
固定資産税と都市計画税は、役所の担当者が計算をして決定します。しかし、担当者も人の子。少なからずミスもします。
実際、数年にわたり誤って多額の税額を請求され、裁判に発展したケースもみられます。もし周辺の平均的な評価額に比べて異常に高い税を課された場合は、自身でも計算を行い、根拠をはっきりさせた上で、不服申し立てを行いましょう。
またその際は、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に相談しておくと、話をスムーズに進めることができます。
見落としがち?家屋調査とは
固定資産税や都市計画税は、役所の担当者が勝手に算出してくれます。ただそれは、根拠がすでにある場合のみ。新築住宅の場合は、新たに根拠となる評価額を算出・更新するために、その住宅を調べなければなりません。
この調査を、家屋調査と言います。
家屋調査では、税事務所の家屋評価担当職員の訪問を受け、建築確認申請書や図面などを見ながら、建物に使われている資材や構造、外観、各種設備などを確認。固定資産税や都市計画税を算出するための、土地・建物の評価額が決定されます。
ちなみにこの評価額は3年に1度見直されますが、1度家屋調査を受けたら、リフォームなどを行わない限り調査を受けることはありません。
それ以降は、不動産市場の価格動向と経年劣化を加味した補正が行われるのみです。
行われるタイミング
家屋調査は、特に申請をしなくても、入居から2〜3ヶ月後に税事務所からお知らせが届きます。不動産の登記を行ったら、登記所から税事務所に連絡がいくようになっているわけです。
通知を受け取ったら、書面に従って家屋調査の日程を詰めていきます。不動産の所有者が立ち会う必要はありませんが、所有者や建物に関する質疑応答ができる人の同席が求められますので、あらかじめ都合をつけておきましょう。
調査当日の大まかな流れ
家屋調査は、以下のような流れで行われます。
- 市町村の担当職員が2名以上で来訪。
- 固定資産税や都市計画税、家屋調査の目的についての説明。
- 外観、内装、構造、各種設備、建材など、資産価値を評価する要因を細かくチェック。
- 完成した日付や、納税のタイミングなどを説明。
以上です。ケースバイケースですが、調査時間は30分〜1時間ほどで終了するのが一般的です。
また、家屋調査にあたっては、住宅の資産価値をわかりやすく把握できるもの、たとえば図面や見積書などを用意しておくとスムーズです。
戸建て購入時&購入後に支払う税金まとめ
ここまで都市計画税について解説してきましたが、最後に改めて、戸建てを購入した際、また、購入後に継続的に支払っていく必要のある税金の種類について見ていきましょう。
購入時に支払う税金
まずは、購入時に掛かる税金です。購入時に掛かる税金には、各種契約に掛かる印紙税。所有権や抵当権の登記に掛かる登録免許税。
そして、不動産を取得した際に1度だけ掛かる不動産取得税、という3つの種類があります。
各契約書の印紙税
印紙税とは、不動産の譲渡契約書や、土地の権利の譲渡契約書、請負契約書など、印紙税法で定められる20種類の書類のいずれかを作成する場合に課税される税金です。
納付は、書類の種類ごとに、定められた基準に相当する額の収入印紙を購入・貼り付けることで納付を行います。 不動産の譲渡に関する契約書では、以下のような形で印紙税が決められています。
契約書に記載の金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円以上、10万円以下 | 200円 |
10万円超、50万円以下 | 400円 |
50万円超、100万円以下 | 1,000円 |
100万円超、500万円以下 | 2,000円 |
500万円超、1000万円以下 | 1万円 |
1000万円超、5000万円以下 | 2万円 |
5000万円超、1億円以下 | 6万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 |
5億円超、10億万円以下 | 20万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金の記載がないもの | 200円 |
ただ、令和2年までは、5億円以下は基準の5割。5億超は、基準の2割まで、税額が軽減されます。
登録免許税
土地や建物を取得した場合、所有権や抵当権を登記する必要があります。この登記に掛かるのが、登録免許税という税金です。
登録免許税は、それぞれの不動産の評価額に、所定の税率を掛けて算出されます。税率は、以下の通りです。
登記の種類 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
土地の所有権の移転登記(売買の場合) | 0.2% | - |
建物の所有権の保存登記 | 0.4% | 0.15% |
抵当権の設定登記 | 0.4% | 0.1% |
なお、軽減税率は、2020年3月31日までに、床面積が50平方メートル以上の物件を取得した場合に限り適用されます。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際に1度だけ掛かる税金。入居から6ヶ月前後で納付書が送られてきて、それを用いて納税を行います。
税額は、土地・建物の評価額に対して4%を掛けたもの。こちらにも軽減税率があり、2021年3月31日までは、以下の条件を満たせば申告を行うことで税負担が減免されます。
- 床面積が50平方メートル以上、240平方メートル以下
- 居住目的の取得であること
- 新耐震基準に適合していること
また、税率は以下の通りです。
不動産の種類 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
宅地 | 4% | 3%(評価額も1/2となる) |
住宅 | 4% | 3% |
購入後に毎年支払う税金
購入後に毎年継続的に支払っていく税金は、固定資産税と都市計画税の2つです。両方とも地方税で、納税が算出されるタイミングも、課税標準も共通しています。
もちろん、税率や使途は異なりますが、固定資産税と都市計画税をまとめた固都税という呼称もあり、まとめて扱われることも少なくありません。
まとめ
- 都市計画税とは、全国の各市町村が、それぞれの市街化区域内(または非線引き区域内)にある不動産に対して課税できる地方税。
- 中には都市計画税を設けていない地域もあるが、基本的には市街化区域内に不動産を持っている人に納税の義務がある。
- 税額は固定資産税評価額に、各市町村が任意で設定した税率(0.3%が上限)を掛けた数式で計算される。
- 都市計画税の使途は、その市町村の都市計画事業、ないし、土地区画整理事業に制限されている。
- 都市計画税の税額は、資産価値の高い不動産ほど高くなる。ただし、担当者が軽減税率を適用し忘れたり、不動産の評価を謝ったりして、不当に高額になってしまうケースもある。
都市計画税は、固定資産税のおまけのようにくっ付いている税金ですが、積り積れば相当な金額になります。
誤って徴収されるケースもゼロではありませんから、その目的や税額が決まる仕組みを知り、税額の大小を自身でもある程度判断できるようにされておくことをおすすめします。
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