購入予算をどう組むべきかは、注文住宅を建てる時に頭を悩ませることの一つです。無理のある返済計画は後々家計を圧迫しますし、そもそも今の年収で住宅ローンの審査が通るのか不安という方もいるでしょう。
そこで、国土交通省「住宅市場動向調査報告書」などの統計データをもとに、注文住宅を建てている人の年収や職業、所要資金の相場を調査。さらに理想的な年収と予算の割合や、予算組みで注意したいポイントなどもまとめました。
この記事がおすすめできる人
- 注文住宅を建てている人の年収が知りたい人
- 注文住宅を建てている人がどういう職業についている傾向にあるのか知りたい人
- 国が用意する家づくりの助成制度について知りたい人
- 家づくりの資金計画の建て方を知りたい人
なお以下の記事でも「注文住宅」について詳しく解説しています。ぜひ、本記事と合わせてご覧ください!
注文住宅を建てている人の統計情報をチェック
どのくらい年収があれば注文住宅を建てられるのか知りたいという人のために、国土交通省や住宅金融支援機構の住宅に関する調査データをもとに年収や職業、所要資金の相場などをピックアップしてまとめました。
年収の相場
平成30年の住宅市場動向調査報告書(国土交通省)によると、注文住宅購入者の全国世帯年収は400万~600万円未満の割合が最も多く26%、ほぼ同率で600万~800万円未満が25.7%となっています。
また物件価格が高めの三大都市圏では、600万~800万円未満の割合が最も多く、29.0%です。ちなみに、平均世帯年収は全国だと705万円、三大都市圏で779万円という結果が出ています。
一方、住宅金融支援機構が行ったフラット35利用者調査でも、似たような結果が出ています。注文住宅は年収400万~600万円未満の割合が最も多く40.8%、土地付き注文住宅でも46%。年収400万円以下は2割前後となっています。
少なくとも年収400万円以上であれば、注文住宅を建てるのに大きな障害はないことでしょう。
就いている職業
注文住宅購入者の就いている職業は、会社・団体職員が4割以上であることが国土交通省の住宅市場動向調査報告書(平成30年)で明らかになっています。具体的には、全国だと44.5%、三大都市圏で45.2%という結果です。
5年間の推移を見てみると会社・団体職員は52.3%から45.2%とやや減少傾向にありますが、公務員の割合がその分上がっているため、安定した定職に就いている人で6割を占めていると考えてよいでしょう。
注文住宅を購入時の住宅ローン利用の割合は7割以上あることもわかっていますので、ローンの審査が通りやすい会社・団体職員や公務員の方が注文住宅購入者の中の割合が高くなるのは、当然のこととも言えます。
実際の所要資金の相場
注文住宅を建てている人の割合が高い年収が400万~600万円未満の会社・団体職員が実際に購入する際の所要資金の相場を見てみましょう。
住宅市場動向調査報告書(平成30年)データでは、全国平均3,205万円、大都市圏平均3,431万円です。
自己資金比率は全国平均28.8%、大都市圏平均32.1%なので、1,000万円前後の自己資金を準備して残り2,500万円弱を住宅ローンを組んで返済していく、という注文住宅の一般的な購入パターンが見えてきます。
自己資金の内訳は預貯金・有価証券売却代金・退職金が最も割合が高いことから、会社員が住宅購入のための資金を預貯金や株式投資などで積み上げ、まとまった金額になった段階で住宅購入に充てると考えられます。
注文住宅を建てる時に押さえておきたい年収と予算の割合
注文住宅の予算を検討する際、年収から計算して組み立てる方法があります。ここでは金融機関の審査基準でも使用される返済負担率を中心に、金融機関による違いや予算を考える上で注意したいポイントについて解説します。
利用する金融機関の種類で予算も変わる
注文住宅を建てる場合は住宅ローンを組むケースが多いと考えられますが、その際に利用する金融機関の種類で予算が変わってきます。全期間固定型のフラットローンと、民間金融機関の住宅ローンとでは、金利や手数料が大きく異なるからです。
民間では銀行や信用金庫などの住宅ローンがありますが、変動型や固定期間選択型、全期間固定型など金利タイプがいくつかありますし、同じタイプでも金融機関によって金利が異なります。どこで住宅ローンを組むかによって資金計画は変わるということを始めに理解しておきましょう。
まずは返済負担率について知ろう
住宅ローンを利用して無理なく返済ができるか計算するための基準となるのが返済負担率です。これは年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことで、借り入れの際の目安になります。
金融機関では住宅ローン希望者の審査の際にチェックを行い、返済負担率によっては住宅ローンの審査が通らなかったり借入額を減らされることがあります。これを知っておけば住宅ローンの返済計画も立てやすくなります。
フラット35
フラット35は銀行や信用金庫、保険会社が窓口になっていますが、返済負担率はどの金融機関でも一律で、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下が基準です。
年収500万円の年間返済額は500万円×35%=175万円が上限となります。これを12ヶ月で割ることでローン返済月額の目安がわかります。
民間の金融機関
民間の住宅ローンの返済負担率の基準は金融機関によって異なります。フラット35のように年収400万円だけを基準に分けてはいません。
100万円以上300万円未満は20%、300万円以上450万円未満は30%以下、450万円以上600万円未満は35%以下、600万円以上は40%以下というように細かく設定されているケースが多いです。
妥当な予算の考え方
返済負担率は予算を組む際の目安にはなりますが、年収を基準としているため実際の生活費など世帯ごとに異なる支出額は考慮されていません。例えば子供がいる家庭なら教育費も確保しなければならないため、実質的な返済可能額は目減りすることになります。
また、同じ年収でも定年まで20年と30年では、ローン完済までの期間設定も変わってきます。結婚や出産など人生にはさまざまなライフイベントがありますので、それを見据えたライフプラン表を作成して、予算を考えるのがベストです。
ゆとりを求めるなら返済負担率25%以下がおすすめ
ライフプラン表を作成しようとすると複雑になり手間をあまりかけられない、大まかでもよいので返済負担の安全圏を知りたいという場合なら、予算を考える上で総返済負担額を25%以下に設定しておくことをおすすめします。
もちろん年収にもよりますが、フラット35で年収400万円で返済負担率は30%以下を基準にしていることから、これを25%以下として考えておけば、リストラで一時的に収入が減るなど、想定外のことが発生してもある程度吸収できるからです。
最低いくらから注文住宅を建てられるか
家づくりは予算に余裕があった方がよいですが、目標設定をする意味でも、最低どの程度の金額から建てることができるかを知っておくことは必要です。そこで、ギリギリの予算ラインから見た注文住宅についてのポイントを解説しましょう。
条件にもよるが年収400万円がボーダー
国土交通省の住宅市場動向調査報告書(平成30年度)を見ると、注文住宅購入者の世帯年収は400万~600万円未満と600~800万円未満を合わせ50%強を占め、400万円未満は15%以下と急に割合が低くなっています。
条件によって変わるため、すべてに当てはまるわけではありませんが、年収400万円以上というのはボーダーラインとして考えられます。その理由の一つとして、年収400万円未満だと住宅ローンの借入可能額が減ることが考えられます。
自己資金を多く準備している場合は問題ありませんが、住宅建築費の大半を住宅ローンに頼ろうとすると資金調達が難しくなるからです。住宅ローン利用を前提に考えるのであれば、少なくとも年収400万円以上ないと厳しいということです。
借入できる目安は2000~3000万円前後
年収から住宅ローンで借入できる目安を知るには、金融機関公式ページのシミュレーション機能を使うと便利です。例としてフラット35の「年収から借入可能額を計算」に入力した結果は以下のとおりです。
年収400万円で融資金利1.17%、返済期間35年で元利均等返済、他の借入金が月3万円(年間36万円)の返済があるとして計算すると借入可能額は2,985万円でした。同じ条件で民間の金利選択型の住宅ローンでは2,262万円でした。
金利や他の借入の有無によって変動しますが、世帯年収400~500万円の場合に借入できる目安は、2,000~3,000万円前後と考えておけば大きく外すことはないでしょう。これをもとに資金計画を立てればよいわけです。
予算が限られる場合は業者選びを慎重に
注文住宅の所要資金の相場は全国平均3,205万円ですので、借入額が2,000~3,000万円だとあまり余裕はないにしても、家づくりが実現できる範囲内です。ただ土地なしの場合は少し厳しくなるかもしれません。
土地価格の安いエリアを探して、建物の方にコストをかける割合を高くしないと、予算をオーバーしてしまう可能性があります。こだわりや優先順位をもう一度考えて、もしすでに建物の検討に入っている場合は構造や設備など見直します。
また、同じ仕様の家でも業者によって家づくりにかかる費用は変わります。予算が限られる場合は、あまり広告宣伝費をかけず低価格でも品質が高い家づくりをする業者を探すなど、慎重に選ぶようにしましょう。
注文住宅の予算組みで後悔しないために知っておきたいこと
予算組みは注文住宅を建てる際には大切なことですが、そもそも誤解していたり、知らないというだけで失敗することもあります。そこで、施主として押さえておきたい予算組みの注意点や予備知識についてまとめました。
借入できる返済額と負担なく生活できる返済額は違う
家を建てる際に住宅ローンを利用することは当たり前のようになっていますが、忘れてはいけないことは、ローンを組むのは借金をすることと同じで、決して自由に使えるお金が増えるわけではないということです。
もちろん住宅ローンには審査があり、誰でも際限なく借りられるわけではありませんが、借り入れできる金額が、そのままローンを組んで家計を圧迫せずに返済していける金額になることではありません。
家族が生活していくためには住宅ローンの返済の他に、それぞれの事情でお金が必要になりますから無理な借り入れをすると、完済するまで苦しい生活を強いられることにもなりかねません。それを十分理解した上で予算組みを考えるべきです。
予算より先にライフプランを考える
注文住宅の予算組みをする場合は、家づくりのためのお金ばかりに意識がいってしまいがちです。自分の理想の家が安くできるというのは嬉しいことですが、それを住宅ローンに落とし込む前にまずライフプランを立てましょう。
住宅ローンの返済は数ヶ月ではなく何十年という単位で続きます。その間には子供が進学して教育資金が必要になったり、車の買い替えなど家庭ごとにいろいろな支出が考えられますし、転職や親の介護など予定になかったことも発生するでしょう。
したがって予算を考える際には現在だけで判断するのではなく、ライフプランから組み立てる必要があります。勢いで住宅購入を進めて失敗することがないように、長期的な視点を持つことが大切です。
頭金なしにはリスクがある
最近、金融機関の中で頭金なしの住宅ローンを組めるところがあります。自己資金がなくてもマイホームが手に入るなら利用してみたいと思う方もいるかもしれませんが、頭金なしのフルローンにはいくつかのリスクがあります。
当然のことですがローンには審査があり、頭金なしの住宅ローンは金融機関にもリスクが高いため審査が厳しくなります。またリスクを抑えるために、一般的な住宅ローンよりも金利が高く設定されます。
例えばフラット35で融資率9割以下の最も多い金利は年1.170%ですが、9割超の場合は年1.430%になります(2019年11月現在)。頭金なしの住宅ローン利用者にとっては金利負担が大きくなり、総返済額が高くなるのです。
助成制度は意外に充実している
注文住宅の予算組みでは、少しでも負担を軽くするために助成制度を検討してみることをおすすめします。意外と内容が充実していますので以下に紹介する制度を知っているだけで、資金計画が楽になることが期待できます。
住まい給付金
消費税により大きくなる住宅取得の負担を軽減するための助成金制度で令和3年12月まで実施されます。
消費税が8%から10%になったことに伴い支給額が増額されています。所得によって給付額は異なり、675万円超~775万円以下だと10万円ですが、450万円以下では50万円と所得が少ない人ほど給付金は多くなります。
次世代住宅ポイント制度
新築住宅やリフォーム時に定められた要件を満たすと獲得できるポイント制度です。
新築住宅では所有者自らが居住し2019年10月1日以降に引き渡しを受けることを要件に、断熱性能等級4、耐震等級2以上などの性能や、耐震性のない住宅の建替え時、家事負担軽減設備の設置などに対しポイントが付与され、指定の商品と交換できます。
ZEH支援事業
ZEHとはゼロ・エネルギー・ハウスのことで、消費エネルギー量と太陽光などで発電したエネルギー量がほぼ等しく収支がゼロになる住宅のことです。
ZEH実現のためには相応の費用がかかりますが、国がZEHを普及させるために行っているのががZEH支援事業で、1戸につき70万円、蓄電システム補助が2万円/1kWhがあります。
地域型住宅グリーン化事業
省エネルギー性能や耐久性能等に優れた木造住宅に対する補助事業です。
対象となるのは長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅、ゼロ・エネルギー住宅、認定低炭素建築物等一定の良質な建築物で、国の採択を受けた事業者グループの住宅会社に依頼して住宅を建てた場合に、業者に補助金が支払われ施主にも還元されます。
家づくりの資金計画の立て方
これまで説明してきた注文住宅を建てる際の年収と予算組みに関する基本的な考え方や心構えを整理する意味で、資金計画をステップごとに説明します。この計画をしっかり立てておけば不安のない快適な暮らしが実現できます。
1.将来まとまった資金が必要なタイミングを考える
住宅ローンを組む場合は定年を迎えるまで、あるいは定年を超えても返済が続くこともあります。住宅住宅の予算を検討する際はその時の年収から月々の返済額を決めることになりますが、将来もずっと同じ状況が続くとは限りません。
また子供の教育費やマイカーの買い替え、定期的にかかる家の修繕費など、将来必要になると想定される出費に備えるために、資金を確保しておかなければなりません。必要なタイミングを考えそれを資金計画に反映させる必要があるのです。
また想定外の費用に対する準備も必要です。リストラや投資損失など思ってもみなかったことが起こることも考えて、余裕を持って資金計画を立てておかないと、それが住宅ローンの返済にも影響することがあります。
2. 1を踏まえて用意できる金額を仮決めする
将来に必要になるまとまった資金のことを考えると、住宅用にと考えていた自己資金を別の用途に充てなければならないこともあるでしょう。
また、保険に加入したり、定期的な積立をして将来に備えるといったことも必要です。
ライフプランを組み立てていって、ある時期までにどれくらいを用意できるのかその金額を仮決めします。家づくりのためには住宅ローンの返済額からではなく、それ以外にかかる費用を事前に把握しておくことが重要です。
夢のマイホームを手に入れるために盛り上がっていた気持ちが、現実を見ることで下がってしまうかもしれませんが、将来もずっと幸せに暮らしていくために必要なことと考え、資金のシミュレーションを行ってください。
3. 無理なく返済できる金額・期間を考える
住宅購入に関連する以外で将来も含めた必要な金額が整理できたら、いよいよ住宅ローン返済について考えていきましょう。現在の年収から借入可能額を算出しますが、すでに想定される将来必要なまとまったお金はわかっています。
そこから無理なく返済できる金額や返済期間を考えていきます。住宅は住んでいるだけでかかるランニングコストがあります。固定資産税や都市計画税、修繕費用、保険料、光熱費などです。
そうしたランニングコストも考えながら、住宅ローン返済額も合わせたキャッシュフロー表を、大まかでも構いませんので作成するとわかりやすくなります。最初はぼんやりして何をしてよいかもわからなかった資金計画がハッキリしてくるはずです。
4. 2と3の合計を仮の予算として都度ブラッシュアップする
住宅に関するキャッシュフロー表と、住宅関連以外の必要資金の流れを1つにまとめたライフプラン表を作成します。すると住宅ローン完済までの全体像が明らかになりますので仮の予算として把握しておきましょう。
時間が経つと今まで気がつかなかったライフイベントがあったり、後から住宅メンテナンスのために必要なお金が判明することもありますので、その都度反映させてブラッシュアップしながら完成に近づけていきます。
完璧な状況把握ができなかったとしても、精度が高い資金計画ができれば不測の事態が起きた際にもどうすべきか判断しやすくなりますし、何より資金不足を心配することなく注文住宅を建てることに集中できるのは大きいでしょう。
まとめ
自分の年収でどんな注文住宅が建てられるのかは気になるところですが、一般的な会社勤めや公務員の方なら理想の家が叶う可能性は高いです。ただ注意したいのはきちんと将来を見据えた資金計画を立てないと失敗することです。
予算を組むのは難しいと思うかもしれませんが手順を踏んで冷静に考えていけばそれほど大変なことではありません。安心して家づくりを進めるため、住宅会社と相談する前に是非ここで紹介したポイントをチェックしてみてください。
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