後で困らないために…土地を相続した時の手続きガイド

後で困らないために…土地を相続した時の手続きガイド

土地に限ったことではありませんが、相続が発生した場合の手続きを詳しく知っている、という人は多くないことでしょう。

相続には、小さくない額のお金が関係します。国や地方自治体に支払う税金も発生しますから、基本的な知識は押さえておきたいところ。

そこでこのページでは、土地を相続した場合の手続きに関する基本知識をまとめています。

相続に関する概要を知りたい方は、ぜひ参考に目を通してみてください。

この記事がおすすめできる人

  • 土地の相続に関する基本的な知識を知りたい人
  • 相続手続きを放置した場合にどうなるのかを知りたい人
  • 相続が発生した場合に何をどうする必要があるのか知りたい人
  • 相続手続きに掛かる費用を把握したい人
  • 遺産の分配方法について知りたい人

相続が発生した時にすべきこと

チェックリスト

まずは、被相続人が亡くなった時にどう言った手続きが必要なのか、順を追ってみていきましょう。

遺言書の確認

一番最初に行うことは、遺言書の有無を確認することです。

どう言った遺言書が残されているかによって、その後に行うべき事項も変わってきます。

手続きを進めた後に遺言書があったことに気づいても、手続き自体はやり直せますが、無用な時間とコストが掛かってしまいます。

ちなみに、遺言書を探す方法については主に以下の2つが考えられます。

自宅の心当たりを探す

遺言状には、亡くなった方が自分で書いて保存しておいたものと、公証人等、第三者立会いの上で作成し、公証役場等で管理されているものの2種類があります。

このうち、自宅で保管されているものは本人しか保管場所を知らないことが多く、ご家族が心当たりを探すこととなります。

また、もし発見した場合は、発見者が家庭裁判所に届け出て、検認してもらうことも必要です。

詳しい手続きや管轄の裁判所を知りたい場合は、 裁判所の公式サイト(裁判所|遺言書の検認)を参照されてみると良いでしょう。

公証役場で確認する

公証役場は、公正証書を作成したり、私文書の認証をしたりする役場です。

全国に300箇所ほどありますが、公証役場で作られた遺言はデータベースで一元管理されているため、必要書類を持って最寄りの役場へ出向けば遺言の有無を確認することができるでしょう。

ちなみに公証役場で遺言を検索する場合に必要な書類は、以下の通りです。

  • 相続人の戸籍謄本(被相続人との続柄がわかるもの)
  • 被相続人の除籍謄本
  • 身分証明書

また、公証役場の所在は、こちらの公式サイト(公証役場一覧)を参照されてください。

戸籍謄本の取得

遺言書の有無を確認したら、次は相続人を確定する必要があります。

親、子供、兄弟、姉妹等がまず思い浮かぶかと思いますが、法に基づいて手続きを進めるために、被相続人の戸籍を調査しなければなりません。

具体的には、亡くなった時から出生時までの戸籍謄本を辿り、相続人になりうる間柄の人物がいないかを調べる手順が必要です。

また、同時に相続人の確定のために、各自の戸籍謄本を収集する必要もあります。

戸籍謄本は、本人の直系の親族であれば請求することができますが、相応の手間と時間、知識が求められるため、弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。

ここまでの手順を被相続人が亡くなってから2ヶ月以内に行っておくと、後の手続きも比較的余裕を持って進めることができます。

遺産分割の相談

相続人を確定したら、相続財産を明らかにし、それと同時に具体的な相続方法を確認していくことになります。

現金や証券、不動産、ゴルフの会員権など、資産の種類ごとに細々した手続きが必要ですから、こちらも司法書士や弁護士など、専門家の手を借りながら進めるのが一般的です。

遺産分割の教義は、相続人が全員参加の上で、参加者全員の合意を取りながらその内容を書面に残していくこととなります。

相続人全員の実印がなければ手続きが進められませんので、話し合いの難航が予想される場合は早め早めの行動が鍵になります。

相続税の申告期限は、被相続人の死亡から10ヶ月以内と定められています。その後の手続きも考えて、少なくとも8ヶ月目までには遺産分割協議を済ませておくと良いでしょう。

必要書類の準備

相続する資産によって必要な書類は違ってきます。

具体的な必要書類は、依頼している弁護士や司法書士、税理士等に確認されると良いでしょう。

ここでは、相続税の申告に必要な書類を紹介します。

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 被相続人の死亡診断書
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の住民票
  • 相続人の印鑑証明書
  • マイナンバー確認書類
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 相続する財産の証明書類

相続税の支払い

相続税は、決められた期限(被相続人が亡くなられてから10ヶ月以内)に申告と納税を行わないと、無申告加算税と延滞税がそれぞれ掛かってしまいます。

一般的な税金と違い、相続税は納付書が送られてきません。したがって自身で納付書を作成して納税する必要があります。

ちなみに、相続税の申告と納税は、どちらを先に行っても大丈夫です。いずれにせよ、期限に遅れないよう、早め早めに行動されることをおすすめします。

番外・手続きは誰に頼めばいいか

相続に関する手続きを相談できる業者は、主に以下の4業種です。

  • 行政書士…主に書類作成を依頼できる。
  • 司法書士…登記に関する専門家。
  • 税理士…税金の専門家。相続に強いかどうかは事務所による。
  • 弁護士…最も強い権限を持っており、依頼人の代理人として動いてくれる。

詳細は事務所によるため少々乱暴な解釈ですが、一般的には上から順にやってもらえることが増えていく、と考えて良いでしょう。

もちろんその分費用も高くなっていく傾向があるため、コストパフォーマンスを考えながら依頼先を検討することが重要です。

土地を相続した場合にかかる費用

電卓

土地を相続した場合に掛かる費用は、諸手続きに掛かる費用と税金の2つに分けられます。

諸手続きにかかる費用

土地を相続した場合にやるべきことは、大きく2つあります。

相続税の申告と、相続登記です。

これらの手続きは自分で行うこともできますが、相当数の書類を用意しなければならないうえ、専門知識がないと、税金などの面で損をしてしまう可能性も。

そのため、専門家に依頼するケースも少なくありません。

書類自体を用意するだけなら大した金額は掛からないのですが、専門家への報酬として10万円前後の費用が掛かる、ということは知っておくと良いでしょう。

ちなみに士業では、同じ手続きでも事務所によって万単位で費用が違うことがままあります。あまりコストを掛けたくない場合は、出会い頭に決めるのではなく、複数の事務所を比較されてみることをおすすめします。

税金

土地を相続した場合に掛かる税金としては、相続登記に掛かる登録免許税、相続した資産に掛かる相続税、土地の固定資産税、といった3つが挙げられます。

登録免許税

相続登記をする際に、法務局に支払う税金です。

個人で手続きをする場合は、申請時。専門家に委託する場合は、その事務所の方針によって先払いか後払いかが変わります。

ちなみに土地の登録免許税がいくら掛かるかですが、不動産価額の4/1000(0.4%)と定められています。

一見小さな数字に思えますが、土地が1,000万円だとしても、4万円掛かる計算になります。多くの場合、10万円以上の支払いが発生することになるでしょう。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

登録免許税の節税について

平成30年度に税制が改正され、土地を相続した際の移転登記に掛かる登録免許税に一定の免税措置が設けられました。

具体的には、その土地が市街化区域外にあり、登録免許税の課税標準となる不動産価額が10万円以下の場合、移転登記に掛かる登録免許税が免除されます。

参考:相続による土地の所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置について

相続税

相続税とは、文字通り相続した資産に掛かる税金です。

少々込み入っていますが、以下のような手順で求めます。

  1. 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を算出する。
  2. 遺産総額から基礎控除を差し引き、課税総額を算出する。
  3. 課税総額を法定相続分で分け、それぞれの相続税を計算する。
  4. それぞれの相続税を合算する。
  5. 実際の相続分をもとに、相続税を分配する。

法定相続分とは、法律で定められた遺産の配分です。以下のように定められています。

  • 配偶者と子供が相続人である場合…配偶者1/2、子供(2人以上のときは全員で)1/2
  • 配偶者と直系尊属が相続人である場合…配偶者2/3、直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合…配偶者3/4、兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

引用元:No.4155 相続税の税率|国税庁

また、相続税の税率は相続分に応じて以下のように定められています。

取得金額税率
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%
5,000万円以下20%
1億円以下30%
2億円以下40%
3億円以下45%
6億円以下50%
6億円超55%

引用元:No.4155 相続税の税率|国税庁

相続税の節税について

相続税には無数の節税方法があります。ここでは、最も利用しやすい控除制度についていくつかピックアップして紹介します。

配偶者の税額軽減配偶者は、課税額が1億6,000万円分(または法定相続分)まで、相続税が掛かりません。
未成年者控除相続人が未成年の場合、二十歳になるまでの年数×10万円が相続税から控除されます。
相次相続控除10年の間に相続が2回以上発生した場合、相続税から所定額が控除されます。

相続税は申告納税です。控除は一見当たり前に利用できるものに思えますが、知識がなければ見落としてしまう可能性も考えられます。

もし自分で納税を行う場合は、抜かりのないように入念に下調べされることをおすすめします。

固定資産税

土地を相続すると、その翌年から固定資産税を支払っていかなくてはなりません。

固定資産税は地方税の一種で、定期的に更新される固定資産税評価額に、標準税率である1.4%を掛けて算出されます。

母数が数千万単位ですから、1.4%と言えども決して少額ではない負担が毎年発生することになります。

土地を遊ばせておくのか、何らかの形で運用するのか。はたまた売却するのか。なるべく早いうちに検討しておくことが大切と言えます。

固定資産税の節税について

固定資産税の節税を考える場合、土地を何らかの形で活用するのが効果的です。

例えば住宅用の土地であれば住宅用地の特例制度が適用され、課税標準が1/3(小規模住宅用地の場合は1/6)に軽減されます。

他、駐車場などに転用して、その運用益で固定資産税を相対的に小さくする、ということも考えられるでしょう。

いずれにせよ、少々の手間は必要ですが、長い目で見れば数百万単位の節約になる可能性もあります。もし土地が遊んでいるなら、放置せず、早めに対策を検討されることをおすすめします。

遺産分割の方法

デスク

相続人が複数いる場合、話し合いに基づいて遺産を分配します。

その際に採られる4つの方法を解説します。

現物分割

遺産分割の方法で最も多いのが現物分割です。

その名の通り、現物を各自に分配していきます。例えば現金は誰、不動産は誰、といった具合です。

単純でわかりやすい方法なのですが、遺産の内容によっては資産価値に偏りが出てしまうこともあり、公平な分配が難しい側面があります。

代償分割

現物分割では偏りが出てしまう場合、誰か一人が全ての遺産を相続し、それ以外の人に相応の金額を支払う、という方法で解決することがあります。

この方法は、遺産を相続する代償として金銭を支払う形になることから、代償分割と呼ばれています。

相続人がある程度の現金を持っていることが前提ですが、土地のように分割しづらい資産が含まれる場合でも全員が納得しやすいという利点があります。

換価分割

遺産を全て現金に換えて、それを以って各相続人が納得できる形に分配する方法もあります。

これは遺産を現金に換えることから、換価分割と呼ばれています。

お金という最もわかりやすい形で遺産を分けることができますが、例えば不動産などの流動性に乏しい資産は現金化に時間が掛かりますし、本来もっと価値のある資産を二束三文で手放してしまうリスクなども伴います。

共有分割

共有分割は、相続人で遺産を共有する方法です。

誰が何を相続するかという手間の掛かる話し合いをしなくて済む反面、資産を何らかの形で運用、ないし現金化したい場合に不自由が伴います。

特に土地などは、後々になって権利関係で面倒なトラブルに発展する恐れもあり、あまり推奨されない方法と言えます。

存命中に土地を相続する場合の流れ

打ち合わせ

相続税を大幅に節約できる利点があることから、生前贈与という方法が近年注目されています。

ここでは、土地を生前贈与する(あるいはしてもらう)際の主な流れを紹介します。

1.土地の権利関係の調査

まず行うべきことは、贈与予定の土地が本当に被相続人本人のものであるかを証明することです。

具体的には、土地の諸情報や所有者、担保等の権利関係者が記載された登記事項証明書を法務局から取得します。

2.贈与契約について検討

権利関係が明らかになったら、次はどのような形で生前贈与を行うか計画を立てます。

というのも、生前贈与には贈与税という税金が発生するため、無計画に進めてしまうと相続人にとって望ましくない結果になってしまう可能性があるからです。

生前贈与に強い専門家(各種士業や銀行の担当者等)と相談しながら、最も損のない形で資産を贈与できるよう、契約内容をまとめていきましょう。

3.契約書の作成

贈与契約の内容が固まったら、契約書を作成し、登記申請の準備を進めます。

後々本人が書いたことがわかるよう、住所や署名といった箇所は手書きにし、印鑑も実印を使っておくのが無難です。

4.登記申請

契約書を作成した後は、贈与の具体的な手続きを行います。

必要書類を準備した上で登記申請書を作成し、法務局に提出。登記手続きが完了すれば、生前贈与は終了です。後は、必要に応じて贈与税を申告し、納税していくことになります。

相続手続きを忘れるとどうなるか

勿忘草

土地を相続した場合に行う手続きは、相続税の申告・納税と、土地の移転登記です。

それぞれについて、放置した場合にどうなるのかを見ていきましょう。

相続税の申告を放置した場合

相続税の申告期限は、遺産を相続してから10ヶ月以内です。

申告・納税をしないままこの期限を超えてしまうと、無申告加算課税と相続税の延滞税がそれぞれ掛かります。

具体的な税率は悪質度によって異なりますが、何れにせよ無申告のままでいられる可能性は高くありません。

場合によっては5割近く税額が膨らむこともありますから、くれぐれも放置しないことをおすすめします。

相続登記を放置した場合

相続登記は義務ではありません。そのため手続きに期限はなく、放置してもペナルティなどはありません。

とはいえ、後々になって面倒な事態に陥る可能性が高いです。なるべく早めに手続きされることをおすすめします。

具体的には、以下のようなリスクが考えられます。

運用できない

土地が遊んでいるから何らかの形で運用しよう、となった場合、相続登記をしていないと何もできません。

土地の所有者であることを証明する手立てがないわけですから、売却して手放すこともできず、八方塞がりの状態になってしまいます。

相続人同士でトラブルになるリスクがある

相続人が複数いる場合、土地の所有者を宙ぶらりんにしておくと、その土地は相続人全員で共有している状態になります。

例えば1人が自分の権利分を独断で売却しようとして、不動産会社が共有分も回収しようと交渉に来るなど、面倒な事態に発展するリスクがあります。

相続人が亡くなった場合に手続きが複雑になる

複数で土地を共有している状態で1人の相続人が亡くなってしまった場合、土地の権利関係を整理するためには、さらにその次の相続人と話を付ける必要があります。

また、権利関係を洗い出すためには、亡くなった人の戸籍謄本を出生時まで辿る必要があり、手間も時間も掛かります。

時間が経てば経つほど手続きが複雑になる可能性が高まりますので、権利関係は早い段階に整理されておくことをおすすめします。

まとめ

  • 相続が発生した場合は、遺言書の有無を確認し、故人の資産と相続人を可能な限り速やかにはっきりさせることが大切。
  • 土地を相続した場合に必要な手続きは、相続税の申告・納税と、相続登記(土地所有者の名義変更)の2つ。
  • 相続税の申告と納税は、相続が発生してから10ヶ月以内に手続きする必要がある。
  • 手続き自体は必要書類を用意して提出するだけだが、書類の数が多い上、控除等の知識がないと損をする可能性もある。そのため専門家に依頼するのがベター。
  • 申告・納税を放置すると税金の負担が増える。相続登記については義務ではないが、後々トラブルに発展する可能性が高いため早めの手続きが肝心。

身近な人が亡くなった場合は、心の整理をつけるのにある程度の時間が必要です。

葬儀等の手続きもこなす必要があり、相続関連の手続きを後回しにしてしまうのは無理のないことです。

とは言え、手続きが遅くなると、金銭面、精神面の両方面で、無用な負担を負ってしまわないとも限りません。

手続きの期限が、被相続人が亡くなってから10ヶ月であることを意識し、なるべく早めに行動されることをおすすめします。

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